新潟県の燕三条地域を舞台に、鎚起(ついき)銅器の若手職人と幼なじみの女子大学生の婚約生活を描いた漫画「クプルムの花嫁」の企画展が燕市産業史料館で開かれている。実在する店舗や街並み、伝統の技術が丁寧に描写されたデジタル原画を紹介。漫画とリンクする実物の銅器も並び、物語の世界観を身近に感じられる。
クプルムの花嫁はKADOKAWA(東京)の漫画誌「ハルタ」で2020年5月から連載中のラブコメディーで、単行本3巻が発行されている。著者は岡山県出身のnamo(なも)さん。ものづくりを題材にすることを編集者に提案されて燕三条を訪れ、鎚起銅器をテーマに決めた。
クプルムはラテン語で「銅」の意味。燕市内の鎚起銅器職人が取材に協力し、市内の企業MGNET(マグネット)がnamoさんの案内と作品監修を担っている。技術を追求する寡黙な職人「修(しゅう)」と無邪気なギャル「しいな」が共に支え合い、成長していく姿が見どころだ。
企画展は「クプルムの花嫁のセカイ展」と題し、2人の表情や心情を活写した場面や仕事風景、市内に実在するラーメン店「大むら支店」や「純喫茶ロンドン」を訪れるシーンなどの原画44枚を複製印刷して展示。鮮やかな赤に着色する技術「錦銅(にしきどう)」や、1枚の銅板から注ぎ口を成形する「口打ち出し」など実際の品物22点を眺めながら、作中に登場する技術や工程に触れることができる。
作品のファンという市内の団体職員(21)は「恋愛模様にキュンとする。見知った所や地域のことがしっかり描かれ、地元民としてうれしい」と感激した様子だった。
4月16日まで。400円(小中高生100円)。月曜休館。