科学技術に関する優れた報道や啓発活動などを表彰する「科学ジャーナリスト賞2023」で、福井県若狭町の県年縞(ねんこう)博物館が特別賞を受賞した。年縞の科学的な意義を分かりやすく伝えている点が評価された。優れた公共建築を表彰する「第18回公共建築賞」でも優秀賞を受賞した。
科学ジャーナリスト賞は日本科学技術ジャーナリスト会議が毎年選考。特別賞は博物館などの継続的な取り組みを表彰する。今回は自薦、他薦で博物館3件を含む書籍、映像など計58件の応募があった。
同館は、地質学や考古学などで年代を決める世界標準の「年代のものさし」である水月湖年縞の魅力を知ってもらおうと2018年9月に開館。7万年分で45メートルある年縞をステンドグラスのように常設展示しているほか、併設する立命館大の研究所では最先端の年縞研究が進み、古気候復元などに活用されている。
昨年11月に視察した同会議メンバーが推薦した。選考理由では「年縞の研究を深めるために創設された世界で唯一の博物館であり、年縞を記すコア(堆積層柱)の科学的な意義を分かりやすく工夫し展示している。気候変動など人類が直面する地球環境の課題を考えるに当たって、存在意義は大きい」とされた。
同館によると、特別賞を受賞した博物館は、東京理科大近代科学資料館(東京)、世界一小さな科学館「理科ハウス」(神奈川)に続き3例目。吉田昌弘館長は「湖底堆積物や科学者の地道な取り組みを紹介する展示が評価されて光栄」と喜ぶ。
公共建築賞は一般社団法人公共建築協会が公共建築の総合的な水準の向上を目的に、隔年で表彰している。今回は全国で33の建築物が優秀賞を受賞した。
県年縞博物館は建物が周囲の景色と調和している点や展示方法、研究施設を併設し、年縞の学術的価値を国内外に広く発信していることなどが評価された。同館によると、県内での受賞は県立恐竜博物館、越前市白山小、南越前町今庄小に続き4例目。