上田市の千曲川に架かる上田電鉄別所線の「千曲川橋(きょう)梁(りょう)」が8月15日、開通100周年を迎える。2019年10月の台風19号災害で橋桁が落ちた被害を乗り越え、千曲川の両岸をつなぐ役割を1世紀にわたって担い続けている。節目まで約1カ月となった16日も、通勤通学の客を乗せた電車が行き交った。
上田電鉄(上田市)によると、千曲川橋梁は鉄骨を三角形が連なるように組む「トラス構造」で全長224メートル。誕生当初は、同社前身の「上田温泉電軌」の青木線(1938年廃止)と川西線(現別所線)の車両が行き来した。この架橋とともに、現在の別所線が全線開通している。
信濃毎日新聞は1924(大正13)年8月16日付の紙面で、その前日に上田駅に「連絡開通した」と報じた。それまでは上田橋を渡った先の対岸からの「発車」だったが、23万円(当時)の工費を「奮発」し、「上田ステーションに直接接続発着することになった」としている。
午前5時10分から2路線が各15分ごとに発車し、午後11時半の発車を最終とする―と記述。「電車の千曲川初渡橋=15日」との説明文で掲載した写真は現在、上田市立博物館が所蔵している。
台風19号災害では、千曲川左岸の堤防が削られたことで19年10月13日に千曲川橋梁の一部が落下した。上田市が橋を保有し、予算8億6千万円余のほとんどを国が実質負担して復旧。21年3月28日に1年5カ月半ぶりに全線開通している。
住民に「赤い橋」として親しまれ続ける千曲川橋梁と別所線。上田電鉄は8月1日、100周年の記念切符を発売する予定だ。担当者は「沿線や市民の皆さんの応援のおかげで節目を迎えることができる」としている。