金沢21世紀美術館で開催中の石川の書展(県書美術連盟、北國新聞社主催)に、同連盟理事の阿部豊寿さん(45)が能登半島地震の被災地に心を寄せた作品「能登復興」を出品した。22日は櫻田酒造(珠洲市)の4代目櫻田博克社長(52)や阿部さんの指導を受ける高砂大学校同窓会書道クラブの約50人が鑑賞に訪れ、力強い筆致に復興への願いを感じ取った。
阿部さんは正方形の紙に、北魏(ほくぎ)楷書で4文字をしたためた。北魏書は南北朝時代に仏教と同時に隆盛し、国家の安寧、故人への鎮魂・祈りをささげる文字として使われてきた。阿部さんは「書体の歴史的背景も認識しながら、精いっぱい能登のことを思って書いた」と振り返った。
22日に会場を訪れた櫻田さんは能登半島地震で酒蔵が倒壊。会場で阿部さんの書と向き合い、「あふれるオーラに元気をもらった。書に負けないくらい頑張りたい」と前を向いた。
阿部さんは解説で書の世界の「余白の美」を紹介し、「人生の中でも余白の時間が大切。書展が復興に向けて心の栄養になればうれしい」と語った。
石川の書展では会員の部の259点と一般の部の入選作418点が展示されている。26日まで。会期中は各日午後2時から県書美術連盟の役員が作品解説を行っている。入場料は500円で、高校生以下は無料。