七尾湾にすみ着く野生イルカに愛着を持ってもらおうと、七尾市能登島のイルカ観光業「能登島マリンリゾート」代表の坂下さとみさん(63)が全17頭の特徴をまとめて名前を付けた。能登半島地震からの早期復興を願い「能登」「勇気」、美しい能登の海にちなんだ「美海(みう)」などと命名。地震の影響で観光客が戻らない中、イルカ観光で能登島に活気が戻る日を待っている。
坂下さんは「頭に2本の線」「背びれに白い傷」などと個体を識別できるようにし、多くの人に澄み切った能登の海を訪れてほしいとの思いを込めた「澄海(すーみー)」、苦しい時も相手を気遣う能登の人たちを表した「礼」などの名前を付けた。
七尾湾はミナミハンドウイルカの最北の生息地とされ、2001年に2頭がすみ着き、現在は17頭が群れで生活している。「能登」と名付けた雌は秋ごろの出産を控え、坂下さんは「仲間のイルカと協力し合う姿が前に進む大切さを再認識させてくれた」と話す。
能登島マリンリゾートは地震で遊覧船3隻のうち1隻が損傷。観光客が乗り降りしていた和倉港は護岸が壊れたままで、傾いた事務所建物は解体を余儀なくされた。
1~8月のウオッチングやイルカと一緒に泳ぐスイムの予約は例年の2割にとどまるが、坂下さんは「元気に泳ぎ回るイルカにいつも励まされている」と前を向いた。