新潟県上越市牧区高尾集落に一棟貸しの民泊施設がオープンした。集落に住む鈴木一恵さん(43)が自宅だった築30年の木造家屋を約3年かけてリノベーションした。頸城平野を望むリビングや森を思わせる緑を基調にした寝室など、おしゃれでくつろげる空間になっている。鈴木さんは「自然と共に暮らす集落にいるとほっとできる。日常から離れてゆっくり気分転換してほしい」と話している。
鈴木さんは34年前、家族で高尾集落に移住した。2017年から、住民有志が月1回、それぞれの自宅を開放して集落に人を呼び込むイベント「高尾お茶のみ散歩」にホスト側として参加。自宅隣にあった築約150年の古民家を購入して改築し、交流拠点にする予定だった。
しかし、長引く新型コロナウイルス禍でイベントが終了。「せっかく育んだ交流を途絶えさせたくない」と、古民家を集落を訪れた人が立ち寄れるシェアスペース「山のホムサ」として運営してきた。
民泊施設の開設は、茶のみ散歩の参加者から「夜の高尾でも過ごしてみたい」という声から発案した。自身や家族はシェアスペースの2階に移り住み、空いた木造2階建ての自宅を民泊施設に改装して9月1日にオープンした。以前飼っていた愛猫の名前を組み合わせて施設は「コサクレム」と名付けた。
延べ床面積は124平方メートル。1階にまきストーブを設置した吹き抜けの15畳のリビングと台所、木製のバスタブを備えた浴室がある。2階には8畳と12畳の寝室を設けた。
木の端材を組み合わせた装飾に加えて、壁や天井をさまざまな色のペンキで塗装した。長年暮らした自宅の思い出を残そうと壁紙の一部を木枠で囲んだり、寝室に緑の塗装を施して周囲の森に入り込んだかのような感覚を与えたりする工夫をした。
高尾集落は現在24世帯48人が暮らす。鈴木さんは「集落に人が訪れることは住民の励みにもなる。家族との思い出が詰まった民泊で、泊まった人も新たな思い出をつくってほしい」と呼びかけている。
1日1組限定で2〜7人が宿泊できる。平日は1泊1人5000円、土日祝日は6000円。素泊まりのみで持ち込んだ食材を調理する鍋や調味料などを備えている。テレビはないがWi-Fiは使用可能。別途料金でバーベキュー用品や洗面用品などの貸し出しや販売もある。
予約はコサクレムのホームページなどで受け付ける。