のと鉄道(穴水町)は16日、能登半島地震の被災地の現状を乗客に伝える「語り部列車」の運行を始め、発生時に観光列車に乗務したアテンダントが被災体験や住民の思いを紹介した。乗客は臨場感ある語りに耳を傾けながら、屋根にブルーシートが掛かった家屋やひび割れたままの道路などを車窓から眺め、能登の早期復興を願った。
愛知県安城市の電気工事業者でつくる「安城広電会」の会員15人が乗車し、穴水―和倉温泉間の約35分間、話を聞いた。
語り部の宮下左文(さふみ)さん(67)は元日に乗務した観光列車「のと里山里海号」が能登中島駅に停車している時に地震に遭った。津波を避けるため近くの高台まで客を誘導したことや、翌日に輪島市杉平町の自宅に帰ると家が全壊していたことなどを振り返った。
締めくくりでは、宮下さんとサポート役を務めたアテンダントの牛上智子さん(47)、坂本藍さん(44)が「復興には時間がかかるが、能登を忘れないでほしい。ほんならね、また来てくだいね、待っとんね」と方言を交え、涙ながらに呼び掛けた。安城広電会の竹内正和さん(68)は「想像以上に復興が進んでいないことが分かった。自分たちもできる範囲で協力していきたい」と語った。
宮下さんは初の語り部業務で印象に残ったことに「頑張って」と声を掛けられたことを挙げ、「まだまだ語りたいことはたくさんある。震災を忘れさせないように能登のことを伝えていく」と意気込んだ。