日本政策投資銀行新潟支店は、新潟県の「佐渡島(さど)の金山」が世界文化遺産に登録された翌年の2025年度の経済波及効果が585億円に上るとの試算をまとめた。来訪者数は67万8千人、交通費や宿泊費といった旅行消費額は412億円と推計。同支店は宿泊施設や人手不足といった課題を挙げ、「中長期的な観光振興に向け、来訪者の満足度向上が重要だ」と指摘している。
調査は日本経済研究所と共同で実施した。両社は21年度にも同様の試算を公表しており、その際は24年度の旅行消費額を367億円、経済波及効果を517億円とした。今回の試算は、物価高に伴う旅行消費単価の上昇などで上振れした。
佐渡観光交流機構によると、佐渡市への来訪者はウイルス禍前の19年度は49万8千人だった。23年度は44万4千人まで回復している。25年度の来訪者67万8千人は前回の試算と同じで、比較的立地条件が似ており、世界自然遺産に登録されている「屋久島」の事例などを踏まえて算出した。
旅行消費単価は佐渡観光交流機構のデータをベースに、物価上昇率などを加味した。交通費や宿泊費、飲食費、買い物費などを合わせた旅行消費単価は、日本人宿泊者1人当たり6万円、外国人宿泊者は10万7千円程度と試算。25年度の旅行消費額は412億4100万円とした。
旅行消費に伴って宿泊施設の従業員らの所得が増え、食材を提供する農家、漁業者、商店の売り上げも増加すると想定。経済波及効果は585億1900万円と算出した。
同支店は、25年度は佐渡観光ツアーの増加が見込まれると説明。宿泊施設や飲食施設の不足、運営を担う人手の確保といった課題を指摘する。
同支店の鈴木英介次長は「来訪者や消費単価の増加は、雇用や税収など島内に大きな恩恵がある。受け入れ体制を整えるとともに、来訪者が急激に増えても、丁寧に対応することが大切だ」と語った。