"令和の大修理"が進む福井県敦賀市原の浄土宗の古刹(こさつ)、西福寺で御影堂(みえいどう)の修理現場が公開された。関係者は、建物の覆屋内側に組まれた足場から、屋根瓦や頂上部にある「妻飾り」などを間近に見学し、200年以上にわたる歴史を感じていた。
国重要文化財の御影堂は県内有数の巨大木造建築。1811年ごろに建てられてから、修理を繰り返しながら維持されてきた。夏までに覆屋が完成し、本格的に工事が始まった。見学会には縁故寺院や文化財修復事業奉賛会、行政の関係者が訪れた。11月10日に一般向けの見学会を開く予定。
修理に取り組む文化財建造物保存技術協会の担当者が説明した。御影堂の屋根について「軒を美しく見せるために反りをつけている。雨水をきちんと流すために瓦の形状やふき方を工夫し、雨が漏らないようにしている」と説明した。瓦の下の板が腐食し全体に波打って見えるとし、瓦はすべて取り除き下地とともに修復し、ふき直すという。
妻飾りには、大きな一枚板が使われたり、波の模様などが丁寧に彫られたりしている。「下から見上げても飾りにはなかなか気がつかない。御影堂は人に見せるものではなく、仏様のために建てられたことがうかがえる」と述べた。
縁側の床板を支える根太について、場所によってはシロアリや雨などで腐食が進んでいる現状を説明。作業の手順については根太を含めすべての部材で「一つ一つどこから取り出したのか分かるように記録を取り、修理が終わったら元の場所に戻している」と話した。
御影堂のほか庫裏、玄関も修復する大修理は2022年度から36年度まで15年間かけて行われる。総事業費は28億円で、国や県、市の補助、西福寺の自己負担でまかなう。寺は文化財修復事業奉賛会を立ち上げ、3億円の浄財を募っている。