佐渡の自然や町並みを表現した作品を数多く手がける新潟県佐渡市加茂歌代の版画家、市橋輝之さん(78)が、自宅近くに「アトリエ佐輝(さき)」をオープンした。これまでに制作した自身の作品を展示公開する施設で、落ち着いた雰囲気の室内には数多くの作品が並び、島内の美術愛好家らが訪れている。市橋さんは「長年の夢がかなった。多くの人に見てもらいたい」と話している。
市橋さんが版画と出会ったのは高校生の時で、20代で妻のツヤ子さん(79)と出会ってからは2人で島中を巡った。時にはやぶをかき分けたり、四つんばいで山を登ったりして作品のモチーフを追い求め、県展や国展で入選、入賞を重ねてきた。10年ほど前に体調を崩して以来、版画からは遠のいているが、現在は水彩画を中心に創作活動を続けている。
2024年6月、多くの人に作品を楽しんでもらおうと、自宅近くの倉庫を改装して「アトリエ佐輝」を開設した。大小合わせて約150点の作品を展示。燃える夕日を背に海面に影を落とす「弁慶のはさみ岩」を鮮烈に描いた作品や、外海府地区の海中から見上げた水面の青い輝きを表現した作品など、有名な景勝地からあまり知られていないスポットまで、佐渡の美しい景色を印象深く切り取った版画が堪能できる。
こだわりは壁一面に貼り付けた版木。市橋さんは「自分の作品に囲まれているというのは幸せなこと」と笑みを見せる。天井には太い梁(はり)が架かり、わらじなど昔ながらの小道具が並ぶ。自身や来館者がくつろげるように畳敷きのスペースも設け、机や椅子も置いた。
市橋さんは「訪れた人には落ち着いて腰かけて、楽しい話でもしながら作品を見てほしい」と話す。
入場無料。来館希望者は事前に市橋さん、090(8849)7000に連絡する。