●2次避難で縁
能登半島地震で全壊した輪島市深見町の民家から公費解体前に救出されたひな人形が16日までに、小松市粟津町の真宗大谷派本廣寺に運ばれた。深見町の住民は粟津温泉に2次避難した縁がある。思い出深い品の置き場に困った被災者の気持ちを酌み、住職ら粟津の有志が預かることを申し出た。ひな祭りに合わせて寺で3月に展示する予定で、被災者は「また、ひな飾りに会える」と感謝している。
ひな人形は高さ約1・8メートル、幅約1・2メートルの7段飾り。輪島市河井町の「みなし仮設住宅」で暮らす吉田ひとみさん(63)の娘のために親族が買ってくれたもので、深見町の実家で保管していた。
昨年11月末に公費解体を控えていたが、ひな人形を収めた箱は押し入れの奥から取り出せない状態だった。実家にいる吉田さんの父・岩﨑武さん(86)が、深見町を拠点に地域おこしに取り組む「紡ぎ組」の佐藤克己理事長(58)に相談し、代わりに人形を運び出してもらった。
その際、2次避難を通じて佐藤理事長と交流があった本廣寺の藤伊滋住職(50)が人形を寺で保管することを提案。人形を受け取った後、代わりに被災地支援に役立ててほしいと温泉卵や野菜などを佐藤理事長に託した。
粟津温泉の旅館や店舗などでは例年3月初旬から約1カ月間、ひな人形を展示している。藤伊住職は「救出されたひな人形をできる限り預かり、大切に飾っていきたい」と話す。
吉田さんは「粟津温泉の方にはお世話になっているので、3月に展示されたら両親を連れて見に行くのが楽しみ」と語った。