売薬さんの歩んだ歴史が分かる展示資料=富山市売薬資料館

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「潮音」効果、売薬に注目 富山市売薬資料館で企画展、宮本輝さんファン来場

北日本新聞(2025年2月12日)

 芥川賞作家で北日本文学賞選者、宮本輝さんの新刊「潮音(ちょうおん)」(文芸春秋)のモデルとなった富山売薬。その関係資料約100点を紹介する企画展「売薬さんの肖像」が、富山市安養坊の同市売薬資料館で開かれている。「潮音」効果で、宮本さんのファンも来場しているといい、同館関係者は「売薬ファンを増やすきっかけになれば」と期待している。5月18日まで。

 「潮音」は明治維新の陰に富山売薬の活躍があったという史実を基にした物語。主人公は、薩摩藩(現在の鹿児島県)を担当する売薬商で、命をかけて自らの役目を全うしようとする姿を、宮本さんが長編歴史小説として描き切った。

 現在、同資料館の別館となっている土蔵はかつて、主人公と同じく薩摩藩を主な商売先とした密田家の売薬蔵だった。江戸中期に創建されたとみられ、富山市に寄付された際、薩摩藩関係者とのやりとりを記録した古文書なども多数保管されていた。宮本さんも「潮音」執筆に際し、来館して取材したという。

 昨年元日の能登半島地震で壁に亀裂が入るなどの被害を受けたが、ようやく修復が完了し、同企画展が修復後初の展覧会となる。

 展示されているのは2019~22年度に寄贈を受けた売薬関連資料の一部で、整理が終わったものを初公開中。その一つ「日南田家の懸場帳(かけばちょう)(顧客などを記録した帳簿)」は、1755年と58年のもので、県内では最古という。また、レトロな薬袋、売薬さんが得意先に配ったお土産の紙風船など、懐かしさいっぱいの内容だ。

 土蔵内の常設コーナーには密田家資料も並び、「潮音」発刊後、県内外から宮本さんのファンも訪れているという。同館の兼子心学芸員は「本を読んだ後でも前でもいいので、この機会に売薬さんの苦労の跡を知ってほしい」と話す。

 観覧料は大人100円、高校生以下無料。3月23日午後1時半から展示解説会もある。

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