天然痘を予防する種痘(ワクチン接種)の導入に尽力した福井出身の町医者、笠原良策(白翁)に焦点を当てた特別陳列が、福井県福井市立郷土歴史博物館で開かれている。良策の子孫が寄贈した自筆資料や、種痘に用いた器具など貴重な資料28点を展示。良策が主人公の映画から展示資料にまつわる場面なども紹介し、人となりや功績を伝えている。3月16日まで。
作家吉村昭さんの小説が原作の映画「雪の花―ともに在りて―」の上映記念として企画。映画制作では、同館が資料写真などを提供し役立てられたという。
江戸期、死に至る伝染病として恐れられた天然痘。良策は予防法として種痘を福井に持ち帰って効用などの理解促進に努め、犠牲者を減らすことに尽力した。種痘に用いた接種用針(メス)は中国の文献を基に考案したもの。ワクチンを運ぶためのガラス製蓄苗器も試行錯誤して製作したという。
良策は種痘に関し多くの自筆資料を残している。痘苗を受け取るため京都に向かった際の記録には、冬の峠越えで吹雪の中、雪をかき分け進んだ決死の様子が記されている。福井を出発した際、詠んだとされる和歌も展示。自身の命をかけて人を救う道を切り開こうとする強い信念と覚悟が込められているという。映画の一場面でも登場している。
文化人としての一面もあり、広い人脈を持っていた。展示では自筆とされる山水画なども並べた。所用品と伝わる県指定文化財の「木彫朱漆塗カメラ(堆朱(ついしゅ)カメラ)」などもあり、良策の多才さがうかがえる。担当学芸員は「映画を見た後に展示を見てもらうと、さらに楽しんでもらえる」とおすすめしていた。
観覧料は一般220円。2月22日、3月15日の午後2時から、学芸員による展示解説がある。