鹿鳴館で男女がダンスに興じる様子を描いた「貴顕舞踏の略図」(神戸市立博物館蔵)

鹿鳴館で男女がダンスに興じる様子を描いた「貴顕舞踏の略図」(神戸市立博物館蔵)

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大名華族の実像に迫る特別展 福井市立郷土歴史博物館で16日から

福井新聞(2015年10月7日)

 明治維新を経て、大名たちは華族という階級に位置づけられ、新しい国を支える役割を担った。福井藩16代藩主松平春嶽とゆかりの侯爵鍋島直大(なおひろ)(旧佐賀藩主)、伯爵立花寛治(ともはる)(旧柳川藩主家)を中心に華族の実像に迫る特別展「大名華族たちの明治」が16日、福井市立郷土歴史博物館で開幕する。彼らの残した貴重な記録や美術工芸品、新時代のシンボルといえる洋服、写真など約100点を通して、明治国家の黎明期に華族たちが何を考え、どう行動したかを探る。

 大名たちは明治に入ると政治の世界から離れ、外交官や天皇の側近、あるいは農業振興や執筆に携わるなど、さまざまな立場で国家の発展に尽力した。欧米と対等に渡り合うため、文化、習慣を積極的に取り入れる一方で、美術工芸品の技術育成に取り組むなど、日本の伝統文化も重んじた。

 同展は4章で構成。第1章は古文書などから、春嶽の実家である田安家を介した松平家、鍋島家、立花家との深い関係を紹介する。立花家へ嫁いだ春嶽の姉が引っ越しの際に、親類が集まって楽しく宴会を開いたことが書かれた1878年の春嶽の日記や、鍋島家に嫁いだ妹が、義理の息子直大に送った手紙もある。

 イタリア公使を務めた鍋島直大にスポットを当てた第2章「華族、海を渡る」は、87年4月に内閣総理大臣伊藤博文が主催した仮装舞踏会で、直大と妻の栄子(ながこ)が実際に着用した華やかな衣装を2人の写真とともに披露。直大は社交ダンスの講習会などを開き、他の華族に指導していたことから、鹿鳴館で洋装に身を包んだ男女がダンスに興じる様子を描いた錦絵「貴顕舞踏の略図」も展示する。

 第3章「華族、土を耕す」は、地元である福岡県柳川に農事試験場を開いた立花寛治に関する資料を並べる。「果物写生帖」(大正時代)は、スケッチした絵を貼りつけて折本にしたもの。断面や種まで詳細に描かれている。春嶽の孫康荘(やすたか)が福井城跡に試農場を開設した際、寛治に協力を求めた手紙も展示する。

 春嶽は、民部卿、大蔵卿などを歴任後、1870年に公職を退いた後も、変わりゆく社会を見つめ日本の未来に心を配った。第4章「華族、筆をとる」では、春嶽が福沢諭吉から贈呈された著書「通俗国権論」(1878年刊)を展示。春嶽の直筆で細かい描き込みがあるなど入念に読み込んだ跡が残る。春嶽が中心となって江戸幕府の儀礼についてまとめた書物「徳川礼典録」の完成時に、明治天皇から下賜された花瓶「鋳銅金銀象嵌花瓶」なども並べる。

 また、宮内省の役人だった春嶽の息子慶民(よしたみ)が宮中のパーティーに呼ばれた時に拝領した「ボンボニエール」(銀でできた菓子入れ)からは、近代における皇室と松平家のつながりが分かる。

 同展は11月23日まで(11月5日休館)。開館時間は午前9時~午後7時(11月6日からは午前9時~午後5時)。観覧料は一般600円、高校大学生500円、中学生以下と70歳以上、障害者とその介助者は無料。関連行事として10月25日午後2時から、越前松平家第20代当主で、同館の松平宗紀名誉館長による記念講演「華族会館から霞会館へ」がある。10月18、11月1、3、8、15、22、23日のいずれも午後2時から、担当学芸員のギャラリートークがある。問い合わせは同館=電話0776(21)0489。

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