昭和初期の面影を残す田中小学校旧本館=滑川市加島町

昭和初期の面影を残す田中小学校旧本館=滑川市加島町

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「おおかみこども」のモデルの小学校などを国登録有形文化財に答申 文化審

北日本新聞(2016年3月12日)

 文化審議会(宮田亮平会長)は11日、滑川市加島町の「田中小学校旧本館」、富山市東岩瀬町の「旧馬場家住宅」、高岡市内免の「金作(かなさく)家住宅」の3カ所9件を国登録有形文化財(建造物)にするよう馳浩文部科学大臣に答申した。近く公示される。今回の登録で、県内の登録文化財件数は55カ所109件となる。

■「おおかみこどもの雨と雪」のモデル/田中小学校旧本館(滑川市加島町)
 田中小学校旧本館は1936年、滑川町立田中尋常高等小学校として建てられた。瓦ぶきの木造2階建て、建築面積621平方メートル。昭和初期の学校建築の代表的な様式で、細田守監督(上市町出身)のアニメ映画「おおかみこどもの雨と雪」では子どもたちが通う小学校のモデルになった。

 中央階段の手すりや天井など随所に、当時流行のアールデコやルネサンス様式の意匠が凝らされている。47年に昭和天皇が来校され、「富山の建築百選」にも選ばれた。

 2014年、新校舎完成で役目を終えた。旧校舎の他の部分は解体されたが、地元の要望を受け、市教育委員会は国とも協議し保存を検討していた。卒業生の市老人クラブ連合会長、柿澤清喜さん(74)は「大変うれしい。地域のシンボルになる」と喜んだ。

■回船業の繁栄伝える/旧馬場家住宅(富山市東岩瀬町)
 旧馬場家住宅は明治時代前期に建てられた回船問屋の屋敷で、木造2階建ての主屋(しゅおく)(建築面積512平方メートル)と前蔵(同47平方メートル)、壱(いち)番蔵・弐(に)番蔵(同157平方メートル)、米蔵(同267平方メートル)、西門・西堀の5件が登録される。

 主屋は、岩瀬地区でも最大規模で、内部は柱に漆塗りを施すなど意匠を凝らした数寄屋造りとなっている。敷地内は土蔵群が並び、白しっくい壁の塀を備えた上質の屋敷構えは、当時の回船業の繁栄を物語る。旧制富山高校(現富山大)の創設資金を寄付するなど、富山の教育事業に尽くした馬場はる(1886~1971)が暮らしたことでも知られる。南隣には国指定重要文化財の回船問屋「森家」がある。

 2014年に馬場家から富山市へ寄贈され、一般公開に向けて準備を進めている。屋敷の隣の住宅に暮らすはるの孫、是久(のりひさ)さん(79)は「港町・岩瀬の発展に役立ててほしい」と話している。

■伝統的な町屋の特徴伝える/金作家住宅(高岡市内免・個人宅)
 金作家住宅は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている高岡鋳物発祥の地・金屋町の近くにある。

 主屋(建築面積124平方メートル)、東土蔵(同39平方メートル)、西土蔵(同41平方メートル)の3件が登録される。主屋は木造2階建てで、1893年に建てられた。1階部分のひさしは厚板ぶきで「笄(こうがい)」と呼ばれる横木が乗り、2階両側に袖壁、正面に千本格子「さまのこ」を設けるなど、金屋町周辺の伝統的な町屋の特徴を伝える。明治、大正時代に建てられた土蔵2棟は一つの覆屋(おおいや)をかけられ、白しっくい壁で仕上げられている。

 同家は50年ほど前まで質屋を営み、現在は住宅として使用している。3代目当主の金作賢(さとし)さん(69)は「今後も大事に住んでいきたい。古い建物なので長く保存されるといい」と話した。

◆登録有形文化財◆
 歴史的景観や造形に優れ、適切な保護が必要と認められた場合に登録される近代建造物。1996年に設けられた文化財登録制度に基づく。選考基準は原則築後50年以上。美術工芸品も対象になっている。現在の状態を変更することが厳しく制約される国宝などの指定文化財に比べ、外観や内装を変更する際の規制は緩やかになっている。

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