正月の松飾りなどに欠かせない縁起物、ナンテンの収穫が一大産地の飯田下伊那地方で本格化している。50年以上栽培を続ける下伊那郡豊丘村の武田佳代志(かよし)さん(80)の畑では真っ赤な実が鈴なりに実っており、みなみ信州農協(本所・飯田市)の集荷開始を翌日に控えた29日も作業に追われた。
標高約650メートルの中山間地の斜面にある畑には、葉も赤く色づいたナンテンの木々が一面に広がる。午前9時すぎに作業を始めた武田さんは、「今年も実がしっかり付いている」。青空の下で日差しを浴びてきらめくナンテンの房をはさみで切り取り、箱詰めしていった。
飯伊地方のナンテン栽培の普及に尽力し、長年連れ添った夫の久さんが昨年7月に亡くなり、武田さんが30アールほどの畑をほぼ1人で管理している。急斜面でのきつい作業だが、「80歳になっても一生懸命働けるのが幸せだね」と笑顔を見せた。
みなみ信州農協によると、ナンテンの栽培は、日当たりの良い斜面の痩せた土地に適しており、飯伊地方では栽培農家が増加傾向という。今年の出荷量は房だけの「房ナンテン」で約15トン、房とともに枝を根元から切り取った「枝ナンテン」は約2万本を見込んでいる。