曙覧の書をまとめたびょうぶ=福井市橘曙覧記念文学館

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橘曙覧しのぶ歌、書一堂 没後150年、福井の記念館で蔵品展

福井新聞(2018年7月6日)

 幕末の福井の歌人、橘曙覧の没後150年に合わせた館蔵品展が、福井県福井市橘曙覧記念文学館で開かれている。ゆかりの人物や後世の歌人らが曙覧とその作品を評価し、脈々としのび顕彰してきた歴史を書や歌、出版物を通じて紹介している。9月24日まで。

 曙覧は「たのしみは-」で始まる短歌「独楽吟」が有名で、国学者としても知られる。1868年に57歳で亡くなった。花鳥風月を詠むことが主流だった時代に、焼き魚や豆腐を食す楽しみ、労働風景、衣についたしらみのことまで歌にし、明治の歌壇に大きな影響を与えた。

 曙覧と親交が深かった京都の歌人、太田垣蓮月(れんげつ)は曙覧の死を惜しみ歌を残している。展示では蓮月を通じて曙覧とゆかりがあった南画の大家、富岡鉄斎が、曙覧が滞在した京都の「山紫水明処」を描き、蓮月や曙覧の歌を添えた作品を見ることができる。没後50年を機に、曙覧の子孫に寄贈したという。

 幕末の福井藩主松平春嶽が「和歌の道の手引きをしてくれる人がいなくなり、今から何を頼りにしようか」と悼んだ歌もある。没後60、70、100年など節目の年に出版された歌や逸話を収めた本や記念誌も並ぶ。

 曙覧自筆の資料も展示している。「代金がいくらかかっても構わないので、いい筆を吟味してほしい」という書状からは、清貧の歌人のイメージが強い一方で、筆にはこだわりを持っていた人柄を感じられる。

 同館の内田好美学芸員(40)は「ビル・クリントン元米大統領がスピーチで独楽吟を引用するまでは、曙覧の知名度は低かった。にもかかわらず一部の歌人たちから評価され慕われ続けてきたことを知ってほしい」と来場を呼び掛けている

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