南アルプスの登山口・飯田市南信濃木沢の便ケ島(たよりがしま)にある聖光小屋に飼われていた雄犬のハッチが、小屋の主人・青木周治さん(71)の死去(1月)に伴って麓の旧木沢小学校に引き取られた。イベントなどに使われている旧木沢小には「猫校長」と呼ばれる雌猫「高峰(たかね)」がすみ着いているため、「犬教頭」と名付けられた。地元の遠山郷観光協会(飯田市)はハッチをPRしようと、ブログ(日記風サイト)で発信を始めた。
聖光小屋は青木さんが2003年にオープン。地元の登山愛好者でつくる「遠山山の会」の前沢憲道さん(67)によると、1人暮らしだった青木さんは地元住民から猟犬として譲られたハッチを頼りに6年以上、一緒に暮らしていた。茶色と黒色の毛が特徴だ。
前沢さんによると、昨年10月ごろ、青木さんが飯田病院(飯田市)に入院し、前沢さんにハッチの世話を依頼。前沢さんはハッチに餌を与えるなど世話を続けた。
青木さんは今年1月20日に死去。病床で「ハッチを頼む」と何度も言っていたといい、前沢さんは「山小屋が再開するまで面倒を見てあげたいと思った」と話す。
ハッチは2月25日に着任。前沢さんらに「犬教頭」と名付けられた。前沢さんや木沢地区活性化推進協議会の山崎博文さん(80)が中心になり餌をあげたり、散歩をしたりして面倒を見ている。現在は、旧木沢小の校舎裏に設けた犬小屋にすみ、学校の敷地内に鹿や猿などが侵入した際にほえて追い払っている。
猫校長の高峰とは相性が悪く、お互いに近づくといがみ合うことが周囲の悩みの種だ。前沢さんは「着任してまだ日が浅く、慣れるまでまだ時間はかかりそうだが、ハッチをお目当てに立ち寄る人が増えればうれしい」と期待している。