日本の水墨画の歴史を築き上げた画僧や絵師たちの作品を紹介する企画展「旅に生きた水墨画の巨匠たち-雪舟から等伯へ」は10日、3連休の初日を迎え、重要文化財などの貴重な作品を目にしようと、大勢の美術ファンでにぎわった。担当学芸員のギャラリートークもあり、「画聖」と称された雪舟等楊(とうよう)の魅力に触れた。11月8日まで。
会場には、室町時代に活躍した雪舟が描いたびょうぶの大作を中心に、その流れをくむ雲谷(うんこく)派、狩野派と競った桃山時代の絵師、長谷川等伯らの作品を並べ、日本独自の水墨画が完成するまでの系譜をたどる。計44点を前後期に分けて展示し、25日までの前期は約30点が並ぶ。
中でも雪舟は花鳥画や山水図、仏画など多彩な作品が楽しめる。上市町法音寺の歯科医、加藤弘直さん(61)は「雪舟の作品を初めて生で見て感激した。筆に勢いがある」と見入っていた。
ギャラリートークでは、同館の中川美彩緒(みさお)学芸課長が雪舟の生涯をたどりながら、一点一点を解説。修行先である京都の相国寺を30代半ばで離れ、山口へ向かったことに触れ「ダイナミックな絵を描く雪舟は、繊細な画風が好まれる京都では認められなかったが、雪舟も他人と違う絵を描きたかった」と強調。自ら文化の中心地であった京都を見限って、中国や日本各地を旅したという見方を示した。
説明に耳を傾けていた富山市清水町の長沢茂さん(81)は「若いころに認めてもらえなかったという悔しい経験があったからこそ、画家として大成することができたのだろう」と話した。
この日は急きょ、柳原正樹館長もマイクを握り、企画展の意図を解説。「水墨画は中国から伝わったものだが、雪舟によって日本流の水墨画が確立した」と強調した。
同展は26日のみ休館。県水墨美術館と北日本新聞社でつくる実行委員会が主催。