村上城主の別邸として村上市に存在したものの、詳細不明だった「相川御茶屋」の絵図が上越市で保管され、村上市の郷土史家大場喜代司さん(78)が模写した上、18日までに村上市郷土資料館に寄贈した。大場さんは「相川御茶屋のことを多くの市民に知ってもらいたい」と閲覧を呼び掛けている。
相川御茶屋は1618~42年に村上藩主を務めた堀直竒(なおより)のころに造られたとみられる。さまざまな文献には、歴代の藩主が御茶屋で弁当を食べたり、花を摘んだりする様子も記されている。
しかし、明治初期に売却されたとみられ、どこにどんな姿で存在していたのか分からなかった。
相川御茶屋の歴史を調べていた村上市の愛好家らは、村上藩主を務めた後に高田藩主も務めた榊原家に着目した。同家に伝わる史料を調べたところ、上越市に「越後村上藍(相)川御茶屋絵図」があることを発見した。
大場さんらは2013年に高田藩士の子孫でつくる「高田藩和親会」の許可を得て、保管先の上越市総合博物館で絵図を閲覧、写真撮影した。
絵図は約2畳の大きさで、榊原家が村上藩主だった1667~1704年に描かれたとみられる。絵図によると、御茶屋の場所は現在の村上市仲間(ちゅうげん)町で、敷地は約3ヘクタール。築山に茶室があったほか、馬場や鉄砲場、田畑、池などがあった。
大場さんは「誰が見ても分かるような相川御茶屋の様子を、地元に残したい」と2014年に、撮影した写真を基に模写を始めた。1カ月ほどかけ、縦約1メートル、横約80センチの絵を仕上げた。「より多くの人に見てもらおう」と昨年末、市郷土資料館で展示することになった。
佐藤耕太郎館長(66)は「知られていなかった相川御茶屋の様子がよく分かる」と喜ぶ。大場さんは「藩主の別邸があったことを知らない地元の人も多い。絵図で地域の歴史を知ってほしい」と話した。