伝統的な町並みで知られる富山市岩瀬地区に、宿泊施設が相次いで開業している。2019年に3軒、今月にも1軒増える予定で、いずれも既存の建物を活用。これまで同地区には宿泊施設がほとんどなかったため、地元関係者は3月に控える路面電車の南北接続を機に、観光振興の後押しになると期待している。
東岩瀬駅から徒歩4分の富山市高畠町に昨年10月、ゲストハウス岩瀬がオープンした。出雲則昌さん(51)=同市大塚=はバイク旅行で宿泊した県外のゲストハウスの快適さに引かれ、自ら運営することを決めた。築約50年の空き家を改築し、男女別の相部屋と定員3人の個室を備える。アットホームな雰囲気で、これまで10カ国以上から100人を超える人が訪れた。
南北接続後は、路面電車が中心市街地まで直接結ばれることから、出雲さんは「宿泊地に岩瀬を選ぶ人が増えるのではないか」と、観光客増を予想する。
岩瀬地区には古い家屋が残る一方で、所有者が手放して空き家になるケースが増えている。そうした空き家の新たな活用法を提案しようと、県内でシェアハウスやゲストハウスを運営する「シェアライフ富山」(同市奥井町)の姫野泰尚社長(36)は昨年12月、東岩瀬町にかつて「売薬さん」が暮らしていた昭和20年代の古民家をゲストハウスにした。地域活性化を応援するクラウドファンディング「CFとやま」を利用し、リノベーションした。
「泊まれる資料館」をコンセプトに、売薬さんの仕事道具をインテリアとして生まれ変わらせた。薬だんすや薬箱、薬の調合に使うはかりなどを並べた。店名は屋号を踏襲し、売薬宿屋「山キ」とした。姫野社長は「地域の歴史や住んでいた人の思い出を受け継ぐという、このゲストハウスでしか体験できない価値を感じてほしい」と語る。
この他、昨年5月に岩瀬表町でカナダ出身のオーナーが宿泊と朝食を提供する「シロクマ イン」を開業。今月9日には釣屋魚問屋(氷見市地蔵町)が東岩瀬町で経営する食品セレクトショップ「つりや」の2階に、1日1組限定の宿泊施設ができる予定だ。
宿泊施設があれば、観光客の滞在時間が長くなり、地元の商店や飲食店に波及効果があると、金尾雅行岩瀬自治振興協議会長は考える。「新店の開業で岩瀬の町全体がきれいに整備されている。観光客が増えることで生まれる好循環に期待している」と話した。