富山県の立山町芦峅寺に伝わる女性救済儀式「布橋灌頂会(ぬのばしかんじょうえ)」の開催に合わせ、立山博物館は23日、特別公開展「布橋を渡る-女性たちの救いと祈り-」を始めた。17点の絵巻や文書などの史料を通じ、江戸時代に加賀藩の庇護(ひご)を受けた立山の実態や儀式の成り立ちを紹介している。10月2日まで。
布橋灌頂会の文献上の初見は、芦峅寺に伝わる文書「一山旧記控(いっさんきゅうきひかえ)」。慶長19年(1614年)に加賀藩初代藩主前田利家の妻、芳春院(ほうしゅんいん)「松」と、二代藩主利長の妻、玉泉院(ぎょくせんいん)「永(えい)」が集落を訪れた際に儀式を行ったと記している。宿坊には、この儀式の様子を描いたとされる絵巻も伝わり、今回はセットで並べた。
展示では、うば尊信仰や儀式の形が1800年代中ごろに確立された経緯にもスポットを当てた。52点の立山曼荼羅(まんだら)で唯一、布橋灌頂会だけを描いた「日光坊A本」のほか、実際の儀式で使われたと伝わる国指定重要有形民俗文化財「立山信仰用具」のほら貝も並べ、「天璋院(てんしょういん)(篤姫(あつひめ))」や「皇女和宮(かずのみや)」の名がある寄進帳も目を引く。
布橋灌頂会は9月25日に5年ぶりに開催。新型コロナ対策で無観客で行う。