酒米の栽培から醸造の工程まで、三味線の生演奏を聴かせて造った酒はどんな味になるか。菊水酒造(新潟県新発田市)はそんな遊び心を持ちつつ大真面目に純米大吟醸酒「史水(ふみすい)」を造り上げた。新潟市出身の三味線奏者・史佳Fumiyoshiさんとコラボし、付加価値を付けた個性的な日本酒の楽しみ方を提案している。
史佳さんと菊水酒造の髙澤大介社長に親交があり実現した。史佳さんは昨年春の田植えから夏の出穂期、稲刈りまで酒米の田んぼで演奏し、その後もこうじ造りや仕込み、瓶詰め、冷蔵庫での貯蔵など酒造りの節目節目に酒蔵を訪れ、三味線を奏で続けてきた。
酒米「菊水」を使った「史水」は500本の限定販売。「寿司に合う日本酒」がコンセプトで、香りは強すぎず、甘すぎもせずキレがあり、食事と調和する風味に仕上がった。
醸造に関わった蔵人(くらびと)らは三味線の音色を聴かせて育てた酒米について「見事に言うことを聞いてくれて、思った通りの味わいになった」と絶賛したが、菊水酒造は何が変化したかを数値で示すような成分分析はあえてしていない。
企画に携わった菊水酒造市場開発本部の南波麻美子さんは「情緒的な面白さを感じながら日本酒を楽しんでもらえたらうれしい」と狙いを語る。「史水」の生産は1年限りだが「今後も新たな面白いことを考えている」と含みを持たせる。
「史水」は720ミリリットル入り8800円。菊水のオンラインショップ「KAYOIGURA」と、新発田市島潟の菊水酒造の本社併設直売所で販売している。