新潟県粟島浦村はふるさと納税を通じた「デジタル島民」の募集を始めた。ふるさと納税の返礼品に、複製や改ざんができない「NFT(非代替性トークン)」アートを島民証明書などとして発行。デジタル島民は村の活性化策のアイデアを提案できる仕組み。デジタル上で交流人口を拡大しつつ、島の将来に向け、外部の視点を取り入れる。
粟島浦村は人口約330人。65歳以上が4割超を占め、村役場職員をはじめとした人材不足に直面している。また、冬季はしけが多く、交流人口が減少する。デジタル島民の募集は、島を訪れなくても活性化に向けた取り組みに協力してもらおうと企画した。
7月には島外のアーティストに依頼し、デジタル島民との交流のシンボルとして壁画を作成。内浦集落の粟島汽船乗り場に高さ10メートルの女性像「粟島弁天」と、その脇に「粟島ハヤブサ」が描かれ、釜谷集落の防波堤には島の暮らしや自然をモチーフにした「ファンファーレ」というタイトルの絵が描かれた。
これら3種類の絵柄を使ったNFTアートが島民証明書となる。また、金額に応じてアートの所有権も取得できる。村によると、23件(11月2日現在)の申し込みがあった。
デジタル島民には、村の行政情報発信アプリ「しらせあい」をインストールしてもらい、島の将来について投票や意見募集などを通じて考えてもらう。活性化施策の実現には、ふるさと納税の寄付金を活用する。
10月21日には「デジタル島開き」を開催。デジタル島民となった新潟プロレスのレスラーが大会を行うと共に「しらせあい」を活用したデジタルクーポンの発行なども行われた。
事業はマイナンバーカードによる乗船手続き自動化などと合わせ、国のデジタル田園都市国家構想交付金2億3900万円を充てる。脇川善行村長は「島外の多くのアイデアをいただき、人口減の歯止めにつなげられたらいい」と話している。
デジタル島民に必要な寄付額は証明書が3万円、所有権が30万円となる。ウェブサイト「JRE MALLふるさと納税」から申し込む。