五十嵐康弘県立大教授の研究室と菓子製造販売・養鶏事業のセイアグリーシステム（高岡市福岡町江尻）は、入善沖の海洋深層水から見つけた天然酵母で発酵させるパンを共同開発した。県立大による深層水酵母の商品化第１号。同社が直営する「フェルヴェール」でクリームパンとして販売を始めており「富山オリジナル酵母の力を味わってほしい」とアピールする。

　応用微生物学を専門とする五十嵐教授は、深層水に含まれる微生物を２０年以上研究している。研究室は８年前から、深層水の中から食品製造に利用できる酵母の分離に取り組み、２年前に成功した。

　その酵母が特有の香りを持ち、アルコール発酵できることを確認。複数の企業と商品化の検討を繰り返したところ、従来から天然酵母パンを製造し、酵母培養技術を持つフェルヴェールで実用化することができた。

　同社の伊勢鉄弥さんは「富山の良い素材を使い、良い商品を提供したいとの思いから協力した」と振り返り、完成したパンについて「もちもち感やしっとり感が増した」と語る。フェルヴェールの富山駅店や高岡本店（高岡市福岡町下老子）などで１９日から扱っており、今後は食パンにも深層水酵母を取り入れ、販路拡大を目指す。

　五十嵐教授は「深層水は富山の一つの資源として役立てられ、多くの商品が販売されている」と有用性を強調。能登半島地震で入善町の深層水取水施設が損傷したこともあり「これまで以上に深層水の魅力をアピールし、研究面から復旧・復興を後押ししたい」と意気込む。

　今回見つけた深層水酵母はワイン発酵に適していることが分かっており、ワイン生産に向けた研究を進めているという。