安曇野市で天蚕(てんさん)と木工の講座を開き、手仕事の価値を残そうと活動する市民団体「安曇野クラフトゲート匠(たくみ)の杜(もり)」が、市内の織物工場にあった糸より機「八丁撚糸(ねんし)機」を、活動拠点の同市の国営アルプスあづみの公園に移設した。29日、約30年ぶりに動かし、糸がよれることを確認した。今年の秋ごろ、糸よりの実演を一般公開する予定だ。
繭から取る糸は細く、そのままでは織物に使えないため、撚糸機で数本を合わせてより、丈夫な糸にする。八丁撚糸機は江戸時代の発明とされ、動力を使って同時に複数の糸をよることを可能にし、効率を格段に高めたという。
同市穂高有明の旧塚田織物工場では、1923(大正12)年の創業時から昭和60年代まで、水車を動力にして八丁撚糸機を使っていた。その後は工場跡に置かれたままで、匠の杜が活用を申し出た。
八丁撚糸機の移設や使い方は、京都市の撚糸業下村輝(ひかる)さん(68)の指導を受けた。この日、モーターで動かし、黒と白の糸をよることできると、八丁撚糸機を提供した塚田美江子さん(63)は「こうして使ってもらえるのはありがたい」と喜んだ。
匠の杜理事長の等々力秀和さん(74)=安曇野市豊科南穂高=は「安曇野でこの機械を使って天蚕の糸ができていたことを知ってほしい」と話していた。