電源開発や温泉街の歴史を紹介する展示スペースのイメージ

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電源開発の歴史発信 黒部峡谷鉄道宇奈月駅

北日本新聞(2015年1月1日)

 今年3月14日の北陸新幹線開業を控え、黒部峡谷鉄道(小橋一志社長)は、宇奈月駅の一部を黒部川電源開発の歴史発信スペースとして整備する。同駅近くの黒部川電気記念館に黒部川第四発電所、欅平(けやきだいら)駅に同第三発電所の展示があり、3カ所を関連づけて難工事の全体像を伝える。今年始まる欅平のパノラマ展望ツアーの参加者に峡谷の魅力を、新幹線で訪れる観光客に電源開発と関係が深い宇奈月温泉を紹介し、周辺を周遊する拠点とする計画だ。今春の営業開始前にオープンさせる。

 黒部川の電源開発はアルミ生産に必要な大量の電力を確保するために始まった。高岡市出身の化学者・高峰譲吉が設立した東洋アルミナムが、黒部川の急勾配や豊富な水量に着目。「黒部開発の父」と呼ばれる土木技師・山田胖(ゆたか)が高峰に請われ調査に当たった。その後、日本電力、関西電力へと開発が引き継がれた。

 黒部峡谷鉄道は電源開発の資材運搬用として開通した。トロッコ電車運行のルーツを知ってもらうことで観光振興につなげようと、宇奈月駅コンコース2階の倉庫約400平方メートルを改装する。

 電源開発の経緯や様子を映像や写真パネルで伝える。待合コーナーの北側と東側の一部をガラス張りにし、四季折々の峡谷美や新山彦橋を駆け抜けるトロッコ電車などの眺めを楽しんでもらう。関西電力の竪坑(たてこう)エレベーターを活用して始まる黒部峡谷パノラマ展望ツアーの受け付けや登山靴レンタルの窓口を設ける。

 関電が運営する電気記念館や欅平駅でも電源開発を紹介。同記念館は関電が手掛けた第四発電所関連を中心に、トロッコ電車シアターや峡谷の断崖絶壁に作られた「日電歩道」の模型を歩く体験コーナーなどがある。欅平駅には昨秋、日本電力が建設した第三発電所関連の展示コーナーを整備。2度のホウ雪崩被害や高熱隧道(ずいどう)工事を写真や映像で伝えているほか、小説「高熱隧道」の著者・吉村昭の万年筆も展示している。

 宇奈月駅でトロッコと電源開発について知るきっかけをつくり、難工事の詳しい内容は同記念館と欅平駅で知識を深めてもらう。

 宇奈月温泉も電源開発と関係が深い。「桃原」と呼ばれた無人の地で、山田胖は資材補給の拠点を兼ねた温泉街づくりにも取り組んだ。大火に見舞われた後、近代的な温泉街に生まれ変わった。こうした90年余りの歴史も改装する宇奈月駅で紹介する。

 温泉街の散策コース案内やイベントスペースも設置。小橋社長は「美しい景観はもちろん、歴史や文化が感じられる峡谷、温泉街に足を運んでもらう拠点にしたい」と話している。

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