北陸新幹線が3日後に開業する。自然、食、歴史と多彩な魅力を持つ上越地域だが、観光客にはどう映っているのだろう。もっと工夫できる点もあるのでは? 記者が観光客の目線で体験し、魅力や改善点を探ってみることにした。初回は上越市の安塚、大島、浦川原、牧の各区で2月28日夜に開かれた「灯(ともしび)の回廊」に「行ってみました」。
灯の回廊は、沿道や雪原をキャンドルが彩る恒例イベント。10万本の火が約60キロにわたってともされる。市と4区の住民組織が主催する。今回はオープニングイベントが開かれる大島区を訪れることにした。
上越妙高駅から車で国道253号を抜けて約50分。大島区総合事務所に駐車し午後5時すぎ、事務所発のシャトルバスに乗り込んだ。発着場所に1日の運行スケジュールのコピーがあり、とても助かった。
オープニングセレモニーが開かれる旭会場(大島区田麦)に着くと、住民が出す屋台村に「珍珍汁」の文字が見えた。「イノシシの肉が入っています」との説明を聞いて注文すると、臭みがない脂身とたっぷりの野菜がとてもおいしい。1杯300円はお得に感じた。セレモニーでは「日本スキー発祥100周年の火」が分火され、会場を照らした。
次は旭発のバスで仁上会場(同区仁上)へ。ほぼ全区間の道路脇にキャンドルの明かりが揺れる光景はまさに回廊そのもので、雪と炎、暗闇が生み出す素朴な美しさを感じた。
仁上では、バスを降りた人が次々と坂道を上った。後について行くと、眼下に約2ヘクタールの雪原を埋めるキャンドルが広がった。地元の人に聞くと、集落をあげて2日がかりで作ったという。思わず「これはすごい」とうなった。
この後、花火を見るため旭会場に戻ろうとしたが、満席のシャトルバスを2本見送り、40分ほど待つはめになった。底冷えする中、道路を挟んだ向かいに見えるたき火が待ち合い場所にもあればと思った。
結局花火には間に合わず、旭から折り返しのバスで午後9時前、総合事務所に戻った。別世界が名残惜しく、自家用車での帰り道は「回廊」の区間が終わるまで速度を落として走った。
◎もう一声 バス増便や寒さ対策を
会場と総合事務所、ほくほく線駅をつなぐシャトルバスは便利だが、満席の多さを踏まえると、便数増や車の大型化を検討してほしい。冬、夜間の野外イベントだけに、暖を取れるたき火がもっとあると「おもてなし」が高まりそうだ。回廊の光景はすばらしく、来年以降は上越妙高駅からのツアーバスなどを用意すれば北陸方面からの誘客も期待できるのではないか。