私たちのパパはどこ―。5月に魚津水族館で誕生したドチザメの赤ちゃん2匹の出生が、謎を呼んでいる。水槽は雌の成体3匹だけが飼育されている「女の園」だったからだ。交尾をしていないにもかかわらず、雌が卵だけで子をつくる「単為生殖」の可能性があるという。他のサメ類では報告例があるが、ドチザメで確認されれば世界初だ。
担当の飼育員によると、雌の双子「マナ」と「カナ」が生まれたのは5月8日で、体長20センチほどだった。「いつも通り見に来たら、見慣れない魚が2匹泳いでいて」。雌しかいないはずの水槽に、なぜ子ザメがいるのか。単為生殖の可能性が考えられた。
魚津水族館では2013年4月にも単為生殖の"疑惑"があった。死産だったため、飼育員らは「まさか、という感じで気に留めなかった」。ところが今回、2匹の誕生で仰天、疑惑が再燃した。
サメの繁殖に詳しい東海大の野原健司講師によると、サメ類には、交尾したときに雄の精子を体内に保存する「貯精」ができる種類がいる。
だが、3匹目の雌の成体が魚津水族館に入ったのは12年1月のこと。野原講師は「4年も前の精子を複数回使えるとは考えにくい」と話す。
日本では北海道以南の近海に生息するドチザメ。母親の胎内で卵がふ化する卵胎生の魚で、春に繁殖期を迎えて通常は一度に10~20匹を産む。
体長約30センチまで育った「マナカナ」姉妹は、今月末まで展示される予定だ。野原講師らにDNA鑑定を依頼するかは、今後検討するという。