野菜や果物の皮を原料としたフードペーパー(五十嵐製紙提供)

野菜や果物の皮を原料としたフードペーパー(五十嵐製紙提供)

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野菜の皮が和紙に...独特な風合い 福井県越前市の五十嵐製紙

福井新聞(2020年4月7日)

 野菜の皮から紙はできるの?―。越前和紙の工房を営む家庭で生まれ育った少年が、素朴な疑問からこつこつ5年間取り組んだ自由研究がきっかけとなった新商品「フードペーパー」が販売される。捨てられる野菜の皮を和紙に漉(す)き込み、独特の色や風合いを生み出す斬新なアイデアは、和紙の原料不足対策や、ごみ減量にもつながると注目を集めている。

 販売するのは福井県越前市岩本町の五十嵐製紙。県が昨年開いたブランディング講座で、同社の五十嵐匡美さん(47)と鯖江市のデザイナー新山直広さん(TSUGI代表)がタッグを組み、新しい和紙のアイデアを考える課題に取り組んだ。

 和紙の可能性を広げようと知恵を絞る中、新山さんが注目したのが、匡美さんの次男優翔さん(南越中3年)の自由研究。身近な食べものから紙ができるかを小4から毎年調べたファイルは何冊にも及び、中にいろいろな野菜、果物で試作した紙が保存されていた。

 実際の紙漉きで水に粘りを出す植物「トロロアオイ」を使えたこともあり、畑で取れる野菜はもちろん、バナナやブドウ、ショウガ、父親がおつまみにしたピーナツからも立派な紙ができていた。学年が進むにつれ、紙の強度や書きやすさも調べるなど研究は本格化。匡美さんたちが商品化に向けて試作に取り組む際に、和紙の原料コウゾとの配合を考える上での"参考書"として十分に役に立ったという。

 第1弾として完成したのはニンジン、ジャガイモ、タマネギの和紙。それぞれの紙からは野菜の色や質感が感じられる。まずはノートやカード、バッグなどの5商品を販売する。

 材料にする皮は、カット野菜を生産する県内事業者から仕入れる。事業者からは「野菜くずの減量になる」と喜ばれている。

 加えて、近年の和紙生産は「原材料との格闘」(匡美さん)。コウゾの国内生産量は農家の高齢化などで昭和期の1割以下に落ち込んでおり、原材料の確保は産地の深刻な問題。新商品はコウゾの節約につながる効果もあり、例えばニンジンの場合はコウゾと1対1の割合で紙になる。

 フードペーパーは、手に取る人に、ごみ削減や伝統工芸の持続可能性といった多様なメッセージを投げ掛けてくる。2月上旬に東京で開かれたバイヤー向けの工芸品展示会では、人気投票2位を獲得。優翔さんは「楽しくて続けてきた研究が人の役に立ってうれしい」、匡美さんも「ごみを減らし、産地も助かり、消費者にも喜んでもらえる商品になるよう挑戦していく」と話している。

 4月中旬をめどにネット販売、県内では鯖江市河和田町の複合施設「ツーリストア」で販売を始める。

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