えちごトキめき鉄道(新潟県上越市)が今夏運行を始めた国内最後の急行形電車に「走るさい銭箱」が登場し、鉄道ファンの注目を集めている。車両の維持管理費用を集めるためのアイデアで、鳥塚亮(あきら)社長自らが車内で浄財を募っている。老朽化による廃車を免れた車両の幸運ぶりにあやかろうと、乗客がさい銭を投じている。
車両は7月にトキ鉄デビューした「455系」。かつては全国で活躍した急行形電車の一種だが、廃車が進み、現役では最後の1両となっている。トキ鉄が昭和の面影を残す車両を誘客につなげようと、廃車寸前のところをJR西日本から購入した。
鳥塚社長はこの幸運な車両をトキ鉄の「ご神体」と位置付ける。数年後の定期検査で見込まれる1億円近くの保守費用にわずかながらでも充てるため、話題づくりも兼ねて「さい銭」という形での寄付金集めを思いついた。
さい銭箱には手作りの赤い鳥居が飾られ、土日を中心とした運行日に、社長や社員が車内販売のように押して回っている。
箱の中には小銭に交ざって紙幣も目立ち、1日で約6万円集まったこともある。運行開始から2カ月間で、寄せられた総額は50万円近くに達している。
鳥塚社長は「古い電車をいつまでも残してほしいというファンの思いの強さを感じている。トキ鉄の経営努力をアピールする力にもしたい」と話している。