縁側に腰掛けながら来場者と談笑する所有者の山崎さん(左)=花の家

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上市舞台のおおかみこども公開10年 聖地誘客の起爆剤

北日本新聞(2022年8月16日)

 上市町出身の細田守監督が手がけたアニメ映画「おおかみこどもの雨と雪」が、ことしで公開から10周年を迎えた。これまで「監督の出身地」や「舞台になった町」に憧れた大勢のファンが上市町を訪れ、町のPRにつながった。町も移住促進や観光振興の起爆剤にしようと、映画に絡めた施策を掲げる。一方、映画関連スポットの管理運営には担い手不足など課題が少なくない。 

 映画「おおかみこども-」は、都会に住む母親の花が、伸び伸びとした子育て環境を求め、自然豊かな田舎に移住する物語。花は町に紹介された空き家で、地元住民から畑仕事の手ほどきを受けながら暮らす。

 細田監督はシナリオを考えていた頃、偶然訪れた上市町浅生の山中で古民家を見つけ、主人公が住む家のモデルとした。映画公開後、その古民家は「花の家」と名付けられ"聖地"として知られるようになると、年間約1万人が訪れる人気スポットになった。

 新型コロナの影響で2020年度は年間6千人台に減ったが、コロナ下の旅行で、近場や密回避が重視されるようになったことから、21年度は1万2千人に回復。ことし7月9日には通算10万人に到達した。町企画課の碓井秀樹課長は「花の家を中心に、町外からの往来が増えた」とPR効果を実感する。

 「花の家」の管理運営は、所有者やファンが担う。所有者の山崎正美さん(81)=同町稗田=を支援するためにファンが「花の家サポーターズ」をつくり、14年にNPO法人を設立した。川端英徳代表理事(57)=広島県=は「山崎さんを助けようと続けてきた」と振り返る。

 NPOの支援者は増えているが、実際の運営に携わる人手は不足していることが課題の一つ。来場者が10万人を超え、山崎さんは「見てもらう者の責任として手入れを続けたい」と言うものの、高齢のため「大変だ」と感じている。

 町は21年度からスタートした総合戦略を「おおかみこどもプロジェクト」と名付け、映画を生かした子育て支援強化や移住促進などに力を入れる。さらに公開10周年は町の魅力を再発信する好機とみて、同町郷柿沢の西田美術館での企画展などイベントを相次いで開いている。

 ただ、同企画展の開会式で小竹敏弘副町長が「『花の家』は町の一大スポット。山崎さんやサポーターの尽力に感謝したい」と述べたように、関連施設の管理運営は民間頼み。映画に力を借りた町の活性化には、行政をはじめとしたサポート体制づくりが鍵を握る。

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