刺し子フォントと米粒のイラストが入った特製ラベルが完成し、坂本さん(前列中央)や山口さん(左端)と喜ぶ花椿かがやきの利用者

刺し子フォントと米粒のイラストが入った特製ラベルが完成し、坂本さん(前列中央)や山口さん(左端)と喜ぶ花椿かがやきの利用者

富山県 黒部・宇奈月・新川

ラベルに障害者の絵・文字 魚津酒造、等外米利用 環境に優しく

北日本新聞(2023年3月30日)

 魚津酒造(魚津市本江新町)は4月、障害者が描いた文字や絵柄を基にデザインした特製ラベル瓶の日本酒を発売する。障害者アートを個人や企業に活用してもらうプロジェクト「ご当地フォント」が全国で広がる中、富山版「とやまふぉんと」を採用した商品第1弾。お酒は従来の仕込みで使用しない等外米で醸造しており、杜氏(とうじ)の坂本克己さんは「人にも環境にも優しい一品に仕上がった」と語る。

 とやまふぉんとは県障害者芸術活動支援センター「ばーと◎とやま」が中心となり、多機能型事業所花椿かがやき(南砺)の利用者がベースの絵や文字を描き、デザイン会社アイアンオー(富山)の山口久美子さんが6種類のフォント・パターンに仕上げた。

 一方、昨年夏に魚津酒造の杜氏に就いた坂本さんは、車いす生活を送る家族を持ち、障害者支援に関心があった。新天地で社会福祉に貢献できる酒造りを思い描いていた中、とやまふぉんとを知り、花椿かがやきに瓶ラベルの作成を提案。刺し子で英字を表現したフォントを使うことになった。

 ラベルは山口さんと検討を重ね、爽やかな青と白のデザインに決定。花椿かがやきで過ごす多くの利用者に協力してもらおうと、新たに約20人に描いてもらった米粒のイラストを一角に添えた。坂本さんは「多くの人の思いが詰まったラベルになった」と喜び、山口さんは「フォント作りを通じ、関係者の気持ちがつながった」と話す。

 坂本さんは酒にもこだわり、精米所で余る等外米を再利用する醸造に挑戦。銘柄、大きさがさまざまな粒が混ざっており、活用の前例はなかったものの、蔵人歴20年の経験を頼りにすっきりとした味に仕上げた。

 「酒になることがなかった素材のそのままの味を伝えたい」との思いを込め、「sonomama(そのまま)」と名付けた。今月下旬、坂本さんと山口さんが花椿かがやきを訪れ、完成したラベルデザインを披露した。

 魚津酒造は4月14日に約3千本(720ミリリットル)を全国発売する。1本990円。売り上げの一部は支援金として花椿かがやきに寄付し、とやまふぉんとの商品第2弾も企画していく。

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