新潟県阿賀野市村杉温泉の老舗旅館「環翠楼」は、明治時代に建てた国登録有形文化財の戸建て宿「臨泉閣」を改修した。新たに半露天の風呂とカウンター付きキッチンを整備。建築当初の趣を大事にしながら、より快適に過ごせるようリニューアルした。

　環翠楼は江戸時代末期の創業。五頭温泉郷の木々に囲まれた約６千坪の敷地に、木造建築の本館と離れ（客室）が庭園を囲むように立ち並ぶ。

　臨泉閣は庭園中心部にあり、入り母屋造りの２階建て。三方の縁側がガラス戸に覆われ、庭を見渡せるようになっている。延べ床面積は約１１０平方メートル。

　築１３０年余りが経過し、近年は水漏れや腐食などで利用を取りやめていた。改修では水回りや柱、床を修繕、補強し、ベッドやソファを入れるなどした一方、座敷や外観にはできるだけ手を加えず、保全に努めた。

　改修前の風呂はユニットバスで、客のほとんどは本館の大浴場を利用していた。新たな風呂は天然石と木材に覆われた上質な空間に仕上げ、開放感のある窓ガラスを開けると、庭の滝に面したテラスに出られる。

　カウンター付きキッチンは、別荘のように客自ら料理を楽しめるようにすることで、新たな層を取り込もうと設けた。改修は１０月上旬に完了し、供用を始めた。改修費用は約４千万円。

　利用は２〜６人。料金は１棟貸しで１泊１２万円。有料で朝夕食を付けられる。

　国登録有形文化財を貸し切って泊まれる宿は少ない。環翠楼を営む１６代目の荒木風太さん（４２）は「明治の面影を残しつつ、利便性と快適性を高めた。文化財の１棟貸し切りを体感してもらいたい」と話している。

　問い合わせは環翠楼、０２５０（６６）２１３１。