新しい年の幕開けを控え、ホテルグランミラージュ(富山県魚津市吉島)の楞谷(かどたに)貴志総料理長(48)が、2024年のえと「辰(たつ)」をかたどった氷像を制作した。約20年間の氷彫刻の経験を生かし、高さ150センチほどの大作に仕上げた。元日からホテルに飾る予定で「晴れ晴れとした気持ちでお正月を過ごしてほしい」と話している。
楞谷さんは20代半ばで洋食コックになった。ホテルでの結婚披露宴で氷像を使った演出が定番だった頃。調理場の先輩が彫る装飾の数々に興味を持った。料理人として氷彫刻の技術も身に付けたいと30歳を機に挑戦し、小さな招き猫を作ったのが最初だった。
時間を見つけては氷を削るようになり、平面デッサンを基に重厚感ある立体作品を生み出せる点に魅力を感じた。今では明治神宮(東京)や松本城(長野)、旭川(北海道)といった国内の主要大会に毎年出場し、全日本5位入賞の実績も持つ。えとの彫刻は、氷像を広く知ってもらおうと2022年から始めた。
24年の辰は、十二支で唯一の架空動物のため、サイズ感と迫力にこだわった。重さ135キロの1本氷(縦28センチ、横55センチ、高さ108センチ)を3個使用。切り分けた氷柱を6層に積んだ後、電動ドリルとチェーンソー、のこぎり、のみで削り、勇ましい表情や全身のうろこを表現した。
日頃の制作から、社会情勢を背景にしたメッセージを作品に込めている。今回のテーマは四字熟語の「雲外蒼天(うんがいそうてん)」。困難を乗り越えた先に明るい未来があるとの意味で「23年は酷暑や大雨など異常気象に悩まされたが、24年は雲のない晴れ間のような澄んだ1年になればいい」と願う。
辰の氷彫刻は元日と2日、同ホテルの玄関ロビーで午前10時から午後4時まで展示する。鑑賞無料。