IRいしかわ鉄道が導入する車両のデザイン(同社提供)

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北陸新幹線でどうなる並行在来線 北陸へ延びるレール(3) 県民の足(下) 三セク編

福井新聞(2015年2月19日)

 北陸新幹線長野―金沢の延伸開業に伴い、同区間を並行して走る在来線はJRから経営分離され、各県の第三セクター会社に引き継がれる。ただ、全国でみると、先行した肥薩おれんじ鉄道(熊本、鹿児島)など三セク4社の経営は苦しい。生活に身近な路線を維持し、運賃アップの抑制と県境、会社を超えた連携をどこまで図れるか。華々しい新幹線開業の陰で切実な問題が待ち受ける。

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 北陸線の金沢―直江津は運行主体がIRいしかわ鉄道(石川)、あいの風とやま鉄道(富山)などに移行する。いしかわ鉄道は、2012年8月に設立された。IRには「愛ある」鉄道を目指す意味が込められている。

 運行区間は富山県境に近い倶利伽羅(くりから)から金沢まで5駅、17・8キロ。経営計画では1日当たり約2万1千人の利用を見込むが、10年後は10%減と予想し、11億円の累積赤字が出ると試算している。

 利用者負担を極力減らすため、石川県と市町が負担する30億円の基金のうち3億円を運賃値上げ抑制に充てる。開業後5年間の運賃は定期などを含めた平均でJRの1・09倍。通学定期は据え置いた。

 「IGRいわて銀河鉄道(岩手)1・71倍、しなの鉄道(長野)1・45倍など先行事例に比べ最も低い水準」と強調し、地元説明会で理解を求める。しかし、6年目以降は平均1・14倍、通学定期1・05倍に上がり、利用者の財布に響くのは必至だ。

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 利便性はどうか。JRの運行本数を維持し、運転間隔をそろえるダイヤを編成して金沢発の終電時間を繰り下げる。とやま鉄道との連携で富山―金沢の直通列車を運行し、同鉄道やJR七尾線などとの乗り継ぎ割引も設定した
。一方、とやま鉄道が導入するICカードの連携は「中長期的な課題」として見送った。

 新幹線が敦賀まで開業すれば、いしかわ鉄道の運行区間は福井県境まで約50キロ延び、経営はさらに厳しくなりそう。石川県の涌井信弘並行在来線対策課長は「今後は福井県との連携も必要。相互乗り入れを念頭に置き話をすることになるだろう」と見据える。

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 福井県内は、敦賀開業時に北陸線の石川県境に近い牛ノ谷から敦賀まで18駅、79キロの運行が三セクに引き継がれる。県や沿線市町などでつくる県並行在来線対策協議会は必要な調査を進めている段階で今後、経営計画案を作って、敦賀開業2年前の20年度に三セクを設立する流れになる。

 人口減もあり経営の厳しさは予想できるが、NPO法人ふくい路面電車とまちづくりの会(ROBA)の清水省吾事務局長は「(累積赤字を抱える)青森、熊本・鹿児島の三セクと比べるのは違和感がある」と語る。北陸線は沿線に都市が並び利用が多く「県境を越えた運輸連合として、1本の鉄道と見立てて使える」とみるからだ。

 県内も県庁所在地の福井駅を中心に延び、朝夕の混む時間帯に快速を走らせたり、福井と森田の間に新駅を設置したりすることも可能とみている。

 県などの支援を受ける三セクのえちぜん鉄道、民間の福井鉄道との連携も重要だ。福井商工会議所は昨春、両鉄道と並行在来線の一体運行による利便性向上策を県に提案した。宮崎和彦常務理事は「県民の立場からすれば、経営が厳しい鉄道会社が3社になる状況はどうか。この機会をチャンスととらえ、県は1社化も含めて検討すべきだ」と指摘した。

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