本堂を後にする前立本尊の御輿の行列=1日午後1時18分、長野市の善光寺

本堂を後にする前立本尊の御輿の行列=1日午後1時18分、長野市の善光寺

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前立本尊、再び宝庫へ 善光寺で御還座式

信濃毎日新聞(2015年6月2日)

 長野市の善光寺で1日、57日間の御開帳期間中、本尊の身代わりとして公開された前立(まえだち)本尊を収める御還座(ごかんざ)式があった。前立本尊を載せた御輿(みこし)を白装束の男たちが担ぎ、本堂から静かに運び出されるのを、参拝者が見送った。

 天台宗、浄土宗の一山住職らによる法要の後、本堂正面に安置されていた前立本尊は御輿へ。僧侶や信徒らを従えた行列が本堂から現れると、参拝者らはカメラやスマホで撮影したり、手を合わせたりしていた。

 境内にある大勧進の宝庫に収められた前立本尊が、次に姿を現す御開帳は慣例通りなら2021年。千葉市から訪れた大島タカ子さん(85)は「何十年も前の若いころに来て以来。ここはやっぱり神々しい。身が軽くなりました」。付き添った長女も「御還座式に立ち会えてよかった」と話していた。

 御開帳中、前立本尊と回向柱をつないでいた「善の綱」もこの日外されたが、本堂前の回向柱は今月30日まで建っている。

<県内観光地、波及効果は>

 善光寺は近く今回の御開帳の参拝者数を公表するが、事務局は「700万人を超えるのは確実」とする。境内の1カ所で数えた参拝者数、周辺の駐車場利用台数などを総合的に勘案して推計しているといい、前回2009年の673万人を大きく超える見通し。北陸新幹線(長野経由)金沢延伸の効果もあり、地元や県内の主な観光地に一定の波及効果をもたらしたようだ。

 ホテルJALシティ長野(長野市)は期間中の客室収入が前回比3割増。ホテルアベスト長野駅前(同)も客室稼働率がほぼ100%で、担当者は「新幹線の延伸当初より、御開帳期間の方が客が多かった」。ホテルメトロポリタン長野(同)も前回を上回り、「特に外国からの団体客は前回の6倍」としている。

 JR東日本長野支社によると、北陸新幹線延伸の3月14日から5月18日までの乗客は、軽井沢―高崎間で318万3600人。前年同期の約2倍で、同社は御開帳が要因の一つとみている。

 北陸新幹線飯山駅が開業した飯山市に近い下高井郡野沢温泉村。野沢温泉旅館組合によると、5月の大型連休後に客が増えて前年の1・5倍の宿もあった。村は、御開帳に合わせた村内温泉施設の無料入浴券付き宿泊プランなどが奏功したとみている。

 一方、北向観音との「両参り」をPRした上田市別所温泉は、課題が残ったという。宿泊者向けに「両参り直行バス」を運行した信州観光バス(千曲市)によると、月100人程度を期待した4月の利用者は44人。担当者は「前回より3割少ない印象」とし、次回に向けた商品開発を図りたいとした。

 善光寺に回向柱(えこうばしら)を奉納した長野市松代町では、特産品販売と総合案内所を設けた初の「松代マルシェ」を連日開催。善光寺からのシャトルバス発着所で参拝者をもてなした。ただ、シャトルバス利用者は予想を下回る1日600〜700人で、「満足のいく状況ではなかった」(長野商工会議所松代支部)とする。

 長野市の戸隠神社は今回、「両詣(りょうもうで)効果」で訪れる人が増加。県内の他の観光地では、松本城や立山黒部アルペンルートの関係者も「御開帳効果」を口にする。同様に御開帳があった飯田市の元善光寺は、参拝者は減ったものの、善光寺参拝の前後に訪れる人がいたとしている。諏訪地方観光連盟は今回、長野市内の観光案内所に来年の諏訪大社御柱祭をPRするパンフレットなどを置き、7年目に1度の祭りへの集客を図った。

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