福井県立こども歴史文化館(福井市)の蓄音機コレクションに、新たに米国製の名機1台が仲間入りした。早稲田大で教壇に立っていた数学者の故・高瀬禮文(れいぶん)氏(神奈川県、享年76)が所有していたもので、遺族から寄贈を受けた。同館の笠松雅弘館長は「コレクションが充実することは県としての財産。館蔵品の目玉の一つになる」と喜んでいる。
寄贈された蓄音機は、米国・ブランズウィック社製の高級機種「パナトロープ エクスポネンシャル12―8」で、1926年ごろの製造。同社はもともと家具メーカーで、その技術を駆使した本体の仕上げなどに、蓄音機が高級家具として捉えられていた歴史も見て取れるという。
音色にもこだわりが詰まっており、スピーカーに当たる「ホーン」の部材には、バイオリンやギターの表板に使われる木材のスプルスを使用。「きめ細かい優雅な音が再生され、音質が極めて良い」(同館)。
同館は昨年3月、創業者が越前市出身の音響機器メーカー「オーディオテクニカ」(本社東京)から、約130点に及ぶ国内屈指の蓄音機コレクションの寄贈を受けた。このコレクションのことを聞き及んだ高瀬氏の遺族から申し出があり、今年9月に同館に搬入された。現在は同館正面玄関脇に「テクニカ」の2台と一緒に展示されている。
同館などによると、高瀬氏は2007年7月に死去。早大商学部名誉教授で、位相幾何学が専門だった。クラシック音楽を趣味とし、自身もオルガンの演奏などをたしなんだという。
高瀬氏のおいの山田貞雄さん(東京在住)は「遺品を生かす方法はないかと考えて寄贈先を探したところ、メンテナンスをして活用してもらえる県立こども歴史文化館を選んだ。皆さんに音を聞いてもらいたい」と期待を寄せている。
同館は23日、今回寄贈を受けた蓄音機を使いコンサートを開く。問い合わせは同館=電話0776(21)1500。