旬をずらしてあんぽ柿を作るため、昨秋に収穫した三社柿を過冷却の状態で保存している天池さん

旬をずらしてあんぽ柿を作るため、昨秋に収穫した三社柿を過冷却の状態で保存している天池さん

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冬の味「あんぽ柿」春も提供へ 生産者が新たな試み

北日本新聞(2015年2月12日)

 南砺市殿(福光)の干し柿生産者、天池善三さん(64)が、冬の味覚「あんぽ柿」の旬をずらし、3月に販売する試みに挑んでいる。昨秋収穫した柿を、氷点下でも水分が凍らない過冷却の状態で約3カ月保存。13日から加工、干し作業を始める。天池さんは希少価値の高い商品で産地のブランド力を高めるとともに、通年販売への足掛かりにしたいと考えている。

 あんぽ柿は遠赤外線乾燥で、通常の干し柿より水分が多い半生状に仕上げる。フルーティーで若者にも人気の特産品だが、賞味期限が約2週間と短いため、晩秋から年末年始にかけての期間限定の味覚となっている。

 天池さんは昨年、食の総合プロデュース企業「DQソリューション」(高岡市、山崎勇人社長)が開発した過冷却現象を利用した冷蔵システムを導入。11月に収穫した原料の三社柿を1500個保存してきた。柿は色、つや、硬さとも収穫時と変わらない状態を保っているという。

 13日から皮むきと遠赤外線による乾燥作業を行い、全国初の「3月に食べられるあんぽ柿」としてインターネット通販サイトで試験的に限定販売する。

 天池さんは「夏の暑い時季に、ひんやり冷やしたあんぽ柿を食べてもらうのが夢」と語る。今回の取り組みが成功すれば今秋以降、保存する数量を増やし、保存期間も徐々に延ばしていきたい考えだ。

 南砺市の干し柿生産農家は高齢化と担い手不足が課題で、天池さんが栽培する約2ヘクタールの柿畑も、大半が高齢の所有者から預かったものだという。人気のあんぽ柿を通年販売する態勢が整えば、安定的な雇用創出など産地活性化にもつながると期待される。

 天池さんは「柿畑が広がる美しい景色を後世に残し、古里の特産品を絶やさないためにも、付加価値を高める取り組みを産地全体に広めていきたい」と意気込んでいる。

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