復元された本尊の袴掛観音=福井県敦賀市金ケ崎町の金前寺

復元された本尊の袴掛観音=福井県敦賀市金ケ崎町の金前寺

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空襲で焼失した十一面観音座像を70年ぶり復元 敦賀、金ケ崎の真言宗・金前寺

福井新聞(2015年5月28日)

 福井県敦賀市金ケ崎町の真言宗・金前寺(こんぜんじ)が、敦賀空襲で焼失した本尊の十一面観音座像を70年ぶりに復元した。元の本尊は平安時代後期の「今昔物語集」に登場し、縁結びの御利益があるとされる「袴掛観音(はかまかけかんのん)」として知られた。歴代住職は「元の観音様が戻り、いろんな人々に良いご縁を頂けたらありがたい」と喜んでいる。6月20日に開眼法要を営むほか、普段も自由にお参りできるという。

 同寺の由来によると、736年に泰澄大師が開山、811年には弘法大師が滞在した。気比神宮の奥の院として12坊あったとされる。江戸初期に現在の場所に移ったが、1945年7月の空襲で建物や寺宝など全て焼失した。

 今昔物語集に登場する袴掛観音は、良縁に恵まれなかった敦賀に住む娘が、人間に姿を変えた観音様の助けによって美濃の豪族の息子と結ばれる話として伝わる。

 戦前の本尊は秘仏として本堂の厨子(ずし)に安置され、人目に触れる機会は少なかった。開帳は十数年に一回で、先々代住職の豊嶋弘尚さん(94)は「十代のころに一度だけ見たが、とても大きな仏像だった」と印象を話す。戦後は空襲を免れた末寺の十一面観音立像を本尊としていた。

 先代住職の弘学さん(66)が12年前に、戦前に発行されたとみられる「袴掛観音」の絵はがきを入手したことから、念願だった復元を計画。毎冬の寒修行のたく鉢や寄付で資金を蓄え、一昨年6月に京都市の文化財修復などを手掛ける会社に製造を依頼した。試作などを経て、高さ約1・6メートル(蓮台を含む)の立派なヒノキの本尊が復元された。

 現住職の弘苗(こうみょう)さん(40)は「先代住職らの強い思いで夢が実現できてうれしい。これから観音様をしっかり守る責任を感じている」と話す。20日は寒修行に回った檀信徒らを招き、新しい本尊をお披露目する。

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