南砺市井波(畑方)の表具師、野原尚二さん(69)は、地元会社経営者の依頼で、表具の技を駆使して散居村を描いた巨大パネル作品(縦1・2メートル、横4メートル)を完成させた。この会社の展示スペースに設置し、郷土色あふれる雰囲気を演出。県表具師文化協会長を務める野原さんは、旧来の表具の枠を超えた新たな作風で業界活性化につなげたいと願っている。
依頼主の石黒自動車工業(南砺市岩屋・井波)社長、石黒英悦さん(73)と意見をすり合わせて散居村の図柄を決め、1年がかりで仕上げた。
同市井波地域の閑乗寺公園から見下ろした風景を基に、日没の場面を再現。夕日に映える水田はオレンジ色を基調としつつ、太陽から真っすぐ日差しが当たる中心部分は白に近い色彩とした。山が照らされた部分には金箔(きんぱく)の砂子をまぶし、多様な色彩で散居村の風情を表した。
下地は、ケヤキ材を升目状に組み合わせた上に和紙などを貼り合わせ、障子と同様の手法で作った。
現在は同社の自動車展示場内で、天井近くの壁に飾られている。石黒社長は「砺波平野の良さをひとまとめにできた」と出来栄えを評価する。
表具の世界に入って約50年になる野原さんは、これほどの1枚物の大作を仕上げたのは初めて。洋風建築の拡大に伴う需要減に悩む業界の現状を踏まえ、「現代のニーズに沿ったスタイルを追求し、活性化につながればいい」と話している。