演目「一人翁」など昔ながらの芸風が伝承されている若狭能倉座の神事能=2014年8月20日、美浜町の彌美神社

演目「一人翁」など昔ながらの芸風が伝承されている若狭能倉座の神事能=2014年8月20日、美浜町の彌美神社

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若狭の神事能が国選択文化財に 独自舞、芸風を伝承

福井新聞(2017年1月30日)

 国の文化審議会は27日、福井県嶺南地域に伝わる「若狭能倉座(わかさのうくらざ)の神事能」など全国5件を国選択無形民俗文化財にするよう文化庁長官に答申した。県内では2010年に選ばれた、おおい町大島半島の祭祀(さいし)「ニソの杜(もり)の習俗」以来7年ぶりで11件目。

 神事能は、旧若狭国に伝わっていた猿楽の流れをくんだ流派「若狭能倉座」が伝承している能で、活動開始時期は不明。1500年代初めごろの史料には、同流派を立ち上げた「倉氏」の名前が記載されており、室町時代には活動が広まったと考えられている。1642年には小浜城内で演じた記録もある。

 現在は毎年8月19、20日に、農作物の五穀豊穣(ほうじょう)を願う「風祈能(かざいのう)」として、若狭町の宇波西(うわせ)神社、美浜町の彌美(みみ)神社の能舞台で演じられている。1980年に県指定となった演目「一人翁(ひとりおきな)」のほか、「羽衣(はごろも)」や「山姥(やまんば)」「杜若(かきつばた)」など10を超える舞が伝承されている。

 一人翁は重要な演目で、公演の最初に演じられる。出演は、役者「太夫(たゆう)」と、面や鈴の箱を持って先導し舞台上で太夫に面を付ける「面箱持(めんばこもち)」の2人。演目中に囃子(はやし)を行わないなど独自の芸風が残り、大衆化された能を演じる観世流など5流派と違う。公演当日は役者たちが体に水を掛け、身を清めてから舞台に臨む風習も受け継がれている。

 県によると、かつては若狭猿楽をくんだ4流派が県内にあったが、現代まで伝承しているのは同倉座のみ。県の担当者は「多くの流派が大衆化していく中で、昔ながらの能や習慣を現在に伝えていて全国的に珍しい。細かな動作や発声の仕方などに観世流の影響が見受けられ、能の変遷も分かる」としている。正式に選ばれた場合、同倉座の源流や開始時期といった詳細を調査した上で文章や映像として記録するため、神事能の保護や伝承につながるという。

 同倉座には現在、50~80代の男女19人が所属。翁を演じる同倉座83代座長の福谷喜義(きよし)さんは「脈々と受け継がれ、信念を持って取り組んできたことが認められてうれしい。これまで以上に真剣に演じ、継承する責任を果たしていきたい」と話している。

 国の文化審議会が「若狭能倉座の神事能」を国選択無形民俗文化財に答申したことを受け、県教委などは3月18日、小浜市白髭の旭座で神事能を特別公開する。県教委と県無形民俗文化財保護協議会が主催。公演は午後1時半~同4時で、4演目を舞う。無料で観覧でき、事前申し込みは不要。

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