春耕を前に、白山市鶴来古町の寺田金物店で、鍬(くわ)の修理がピークを迎えている。県内各地から壊れた鍬が次々と持ち込まれ、店主の寺田仁さん(67)が刃に新しいブナの柄を取り付けたり、刃先を研いだりして依頼主の手になじむ1丁を丹念に仕上げている。
同店には毎年、白山市内をはじめ、金沢や小松、加賀、津幡などの農家から鍬の修理の依頼があり、3、4月が最も多い。今年は1日の間にまとめて20丁ほど持ち込まれた日があった。寺田さんは「1丁1丁の鍬の個性を見極め、使いやすいようにしっかりと直したい」と話した。
鶴来ふるさと歴史研究会と同店によると、戦前の鶴来地区には20軒以上の鍛冶屋があり、鍬などの農具を作っていた。現在、鍛冶屋は姿を消し、鍬の修理を担う店も珍しいという。