日展審査員などを務め、昨年12月に90歳で亡くなった岡山県出身の洋画家、川上一巳さんの遺作展が9日、伊那市西春近のかんてんぱぱ西ホールで始まる。柔らかい筆致で描いた人物や風景画など77点を展示。伊那谷で描いた少年の絵もあり、親族がモデルになった人を探している作品もある。
川上さんは50年ほど前から同市高遠町などを訪問。遺作展は、死後に瑞宝小綬章を受章したことを記念し、親族の三宅由紀さん(62)=岡山県笠岡市=が企画した。
三宅さんによると、川上さんは伊那谷の自然に魅せられ、毎年春に訪れてはスケッチに没頭。「第二の故郷」と言うほど愛着があった。
自然の中で無邪気に遊ぶ子どもの姿に感動したことがきっかけで、晩年は子どもをモデルに描き続けた。千人以上をモデルにし、デッサンをしては「君と僕の合作だ」と後日、絵を渡していた。
今回の展示作品の中には、唯一、モデルになった少年が分からない作品がある。いすに座った姿で、2006年に市内で描いたとされ、現在20歳前後になっているとみられるという。三宅さんは「生涯をかけて描き続けた作品を多くの人に見てほしい。モデルになった人が見つかったら、おじの思い出話を一緒にしたい」と話している。
17日まで。午前9時〜午後5時(最終日は午後3時)。入場無料。