シードルを初めて仕込む毅さん(左)と寛さん=9日、松川町

シードルを初めて仕込む毅さん(左)と寛さん=9日、松川町

長野県 伊那路

後継ぎ決意、帰郷の兄弟 松川町の果樹園、シードル醸造所新設

信濃毎日新聞(2019年12月10日)

 松川町大島増野(ましの)地区にある果樹園「フルーツガーデン北沢」の4代目北沢毅(つよし)さん(28)と弟の井口寛(かん)さん(26)が、リンゴを使った発泡酒「シードル」の醸造所を設立し、9日、初の仕込みをした。シードル造りのために相次ぎUターンした兄弟2人は、代々受け継がれてきた果樹園を新たな形で発信しよう―との思いを込めて、醸造所は屋号にちなむ「マルカメ醸造所」と名付けた。

 醸造所は、果樹園内の建屋約300平方メートルを改築して整備。11月に醸造免許を取得し、年約2千リットルの製造を目指す。9日は、自家栽培のフジや王林、グラニースミスなど5種類のリンゴを搾汁し、醸造用タンクに仕込んだ。来春に商品化する。

 毅さんは都内で証券会社に勤務、寛さんは長崎県でダイバーとして働いていたが、それぞれ2018年、17年に帰郷。転身を決めた背景には、リンゴ農家などでつくる南信州松川りんごワイン振興会の代表でもある父、公彦さん(54)の思いがあった。公彦さんは5年ほど前からシードルを委託醸造。「自社で醸造し、産地としての幅を広げたい」と考えていた。

 毅さんは退職後にバーベキューのインストラクター資格も取得。本年度は、南アルプスを望む果樹園で、料理とシードルを味わう催しを継続的に開いてきた。毅さんは「果樹園という特別な空間を、シードルを通じて県内外の人に発信したい」。寛さんも「シードル醸造が若いリンゴ農家の意欲につながるように、新しい流れをつくっていきたい」と意気込んでいる。

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