先代の技を継承する3代目重樹さんと弟子=千日町

先代の技を継承する3代目重樹さんと弟子=千日町

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金沢和傘 弟子3人が新工房で継承

北國新聞(2020年5月20日)

 金沢和傘を手掛ける金沢市千日町の松田和傘店で、3代目松田重樹さん(61)の元に3人の弟子が集い、伝統の技の継承を続けている。3月に95歳で他界した2代目の父・弘さんの四十九日を終えた重樹さんは、来月にも店の隣で新工房を開設する。弘さんの残した金沢和傘の技術を後世へつなぐため「おやじが伝えてきた和傘の技術を協力して守っていきたい」と思いを強くしている。
 松田和傘店は金沢和傘を制作販売する唯一の工房として、北陸の雪にも耐える「堅牢優美」な傘を作り続けてきた。弘さん亡き後も、竹を削り、紙を張り、一本一本手作りで仕上げる工法は先代のまま。販売は千日町の店舗のみというスタイルも変わらない。
 新型コロナウイルスの影響で主力だった県外や海外客が減り、今月の売り上げはゼロというが、「父を思いながら、今は将来のために作り続けたい」と黙々と手を動かす重樹さん。10歳から傘作りに情熱を傾け、全く売れなくても寝ずに仕事をしていた先代の姿が重なった。
 工房には現在、金沢美大OGの作り手3人が集う。昨年11月にこの道に入ったばかりの森田采希子さん(26)は、県工高で漆、美大で彫刻を学び、傘の絵付けをしていた縁で職人を志した。弟子入りして4年目となる大阪出身の松本佳子さん(52)は、傘の修理を担当し、先人の作り手に学んでいる。2人は「早く傘の紙を張れるように技術を身に着けたい」と意気込む。
 重樹さんが認めた「一番弟子」の間島円さん(埼玉県在住)は、毎月1度、店に足を運んで研さんを続ける。現在は感染の影響で、埼玉の自宅で傘の頭紙などの制作に打ち込んでいるという。
 店の隣家を買い取り、来月には、新たな店舗兼工房を構える予定だ。金沢和傘の技術継承の場となると共に、古い町家のたたずまいを生かし、坪庭の見える小間に茶室、奥の土蔵には、戦前に大産地だった伊賀上野(三重)から受け継いだ古い傘作りの道具類の展示室を設け、来店者をもてなす。重樹さんは「よいお客さんに恵まれ、喜んでもらって、ここまで続けて来られた。新しい店でまたお迎えしたい」と期待した。

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