新潟県弥彦村で昨年末オープンしたビンテージ古着店「マッシュルーム」に、思わず目を疑うような値段のビンテージジーンズが置かれている。およそ150年前の1870年代初頭に米国で作られたとされる1本。米国の炭鉱跡地から掘り出された物で、値段は驚きの1500万円だ。
マッシュルームは新潟市中央区の古町地区で2002年に店舗を構え、万代地区に移転して16年ほど営業した。その後、「観光地に来た高揚感で気軽に入ってもらいたい」と、昨年12月20日に弥彦村弥彦の観光施設「おもてなし広場」の横に移転オープンした。
1500万円のジーンズは、米国西部の炭鉱跡地に分け入り、炭鉱員が作業着としてはいていたジーンズを岩の間から発掘している「デニムハンター」が、10年ほど前に発見した物。後に米国内の別の収集家の手に渡ったが、価格交渉の末に昨年12月、マッシュルームが買い付けた。
マッシュルーム代表の土田鏡さん(43)は「移転に合わせて勇気を出して買った。手元に置いておきたい気持ち半分、売ってしまいたい気持ち半分だ」と話す。
ジーンズは、ポケットの両端に金属製のリベット(びょう)が使われていることや裁縫の特徴から、ジーンズの元祖で「リーバイス」のブランドで知られる米国のリーバイ・ストラウス社製とみられる。背面のポケットが一つしかないことや、ブランドロゴが入ったパッチ(ラベル)跡が中央にあることなどから、1873年に作られたと推定されている。リーバイスの最初期のジーンズであることが高額の理由だ。
ジーンズは左裾の一部が欠損し、穴や汚れもあり、1500万円の値段が付くのは破格に思えるが、ビンテージ古着は物によってかなりの高値で取引されている。同店の顧客の中には、希少価値の高いジーンズを銀行の貸金庫に保管している人もいるという。
仕入れ後に大々的な宣伝はしていないものの、常連客からの関心は高い。「コロナウイルスが収まったら拝みに行く」という遠方の客や、来店して実物を確かめた後に「1千万円なら買う」という客もいた。
店を訪れていたアパレル関係の会社員で長岡市の男性(28)は「1970年代のビンテージジーンズは買ったことがあるが、ここまで古い物はさすがに見たことがない。博物館で展示されるレベルではないか」と目を丸くしていた。
商品は店内のケースに置いてあるほか、オンラインショップでも確認できる。土田さんは「こんなに良い状態で残っているのは奇跡。来た人にはぜひ見てもらいたい」と話した。