〈Tシャツ、マスクのアレンジに活用〉
加賀友禅の技法を生かした熱転写シートが4日までに登場した。金沢市内の事業者が新型コロナの影響による着物需要の落ち込みをカバーしようと、友禅模様をTシャツやマスクにアイロンで簡単に貼り付けられる商品として実用化した。加賀友禅のデザインを手軽に日常生活に取り入れるアイデア商品として提案し、伝統工芸に興味を持ってもらうきっかけとする。
シートを手掛けたのは、加賀友禅「毎田染画工芸」(本多町3丁目)の3代目毎田仁嗣さん(46)と妻の麻希さん(38)。コロナ禍で自宅で過ごす時間が長くなる中、人気の高まる手芸や衣類のアレンジなどに活用してもらおうと麻希さんが提案し、昨年7月に開発に着手した。
シートは「貼る加賀友禅 PETA YUZEN(ペタ・ユウゼン)」の名称で、洋服や小物に重ねてアイロンで温めると模様がプリントされる。青海波(せいがいは)や七宝といった伝統的な文様をはじめ、四季の草花や金沢の名所などの絵柄をそろえた。洗濯しても色落ちせず、他の衣類に色移りもしない。
制作には市の金沢ブランド工芸品開発促進事業の補助金を活用し、県内のまちづくり団体やラベル印刷会社などが協力した。
仁嗣さんによると、コロナ禍で大人数の式典やパーティーが減ったことで、ハレの日に合わせて着物を新調する人が少なくなっている。加賀友禅シートを通じて、市民や観光客に緻密な描写や繊細な色合いなどを知ってもらい、新たなファン獲得につなげる。
8月以降には、マスクやポーチ、ミニトートバッグにシートを貼り付ける制作体験会を開催する。時間は20分~1時間程度を想定している。将来は小児病棟や高齢者施設での出張体験会の実施も検討している。
仁嗣さんは「普段使いの加賀友禅として広めていきたい」と話した。