田の神を送り出した川口さん=輪島市白米町

田の神を送り出した川口さん=輪島市白米町

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田の神を丁寧に送り出し 奥能登各地であえのこと

北國新聞(2022年2月10日)

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産である農耕儀礼「あえのこと」が9日、奥能登各地で営まれた。儀礼を伝承する各家では、昨年12月に家に迎え入れた、目には見えない田の神を雪に覆われた田へ丁寧に送り出し、「今年もよろしくお願いします」と豊作を祈った。

 
 珠洲市若山町火宮の田中茂好さん(70)方では、昨年12月と同様に見学者を入れずに家族だけで営み、昔ながらの作法で神様を送り出した。

  
 輪島市白米(しろよね)町の県職員川口喜仙(よしのり)さん(57)方では、紋付きはかま姿の川口さんが夫婦神に輪島塗の膳に盛ったおはぎや煮物など手作りのごちそうを勧めた。

 この後、川口さんは田の神を自宅隣の棚田へと導き、「雪で真っ白になった田んぼにお送りするのは申し訳ありませんが、今年も豊作となるようお願いします」と語り掛け、米、塩、酒を順にまいてくわ入れした。

 輪島市三井町小泉の茅葺庵档(かやぶきあんあて)の館では、地元の三井公民館の「田の神様まつり」が営まれた。

 神をもてなす主人「ゴテ」役を小山栄館長(71)が務めた。住民約25人が見守る中、田の神を風呂に案内し、山海の幸が盛られた食事でもてなした後、近くの田へいざなった。小山館長は「今年の豊作と、家内安全をよろしくお願いします」と語り掛け、雪に覆われた田に鍬(くわ)を入れた。

  
 能登町国重(くにしげ)では、住民7人が国重田の神様保存会長の吉村安弘さん(78)方で厳かに営んだ。感染症対策として町外からの見学を初めて制限した。

 吉村さんと保存会事務局長の吉田義法さん(50)が田の神に小豆飯やフキ、ブリの刺し身、ハチメなど山海の幸を振る舞った。今年は雪が多いため田に送り出さず、3月9日まで玄関先で休んでもらう。

 集落合同で儀礼を守る同町時長の山口集会所では、山口みどりの里保存会の11人が行った。会長の花畑壽一さん(81)が主人役となり、田の神に米やゼンマイ、タラの子付けの刺し身などを出し、甘酒を勧めた。雪の積もった田に送り出した後、くわを入れて豊作を願った。映像配信や直会(なおらい)は取りやめた。

 柳田植物公園の古民家「合鹿庵(ごうろくあん)」では、町あえのこと保存会員の中正道さん(70)が主人役を務めた。見物人を20人に制限した。

  
 穴水町で唯一、あえのことを受け継ぐ森川祐征さん(82)=藤巻=方では、森川さんが田の神を風呂に案内した後、朱塗りの膳に盛られた煮しめやかぶら寿司、尾頭付きのタイなどでもてなした。

 この後、みのを着た森川さんは、自宅前の田に鍬(くわ)を入れ、「どうか体に気を付け、豊作になるよう田んぼを見守ってください」と願って手を合わせ、田の神を送り出した。

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