能登半島地震で窯が倒壊しながらも破損を免れた珠洲焼約1千点が、5月3~5日に金沢市のしいのき迎賓館で展示販売されることになった。珠洲焼作家でつくる「創炎会(そうえんかい)」が全国から寄せられる「買って支援したい」との声を受けて、作品展を開催する。収益は窯の再建などに充て、会長の篠原敬さん(64)=珠洲市若山町出田(すった)=は「復活に向けた一歩にしたい」と力を込める。
珠洲市内では、地震で全18カ所の窯が倒壊するなどの被害を受け、現在はどこも生産できない状態となっている。篠原さんの窯は昨年5月の奥能登地震で倒壊。再建するも元日の地震で火を入れる前に再び崩れた。焼成前の作品100点以上が割れ、自宅にあった作品も被害に遭った。
野々市市に避難している篠原さんは週末になると珠洲へ足を運び、正院町平床に構えた工房の片付けを進めている。地震直後から篠原さんのもとには、支援の申し出が全国から届いていた。
ただ、1、2月は避難生活で手いっぱい。3月に入って会員同士で連絡を密に取り合うようになり、全国のファンの気持ちに応える形で金沢での作品展を決めた。
会員の中には珠洲を離れて作陶の拠点を金沢に移した人、既に引退を決めた人もいる。当日は会員38人(1月時点)中、20~80代の29人が、普段使いできる箸置きから壺(つぼ)まで、大小の作品を並べる。篠原さんは「珠洲焼の復興が、珠洲全体の復興につながればいい」と期待を込めた。